「今期こそ」と掲げた目標が、いつのまにか重荷になっていた――そんな経験はないだろうか。ゴールを明確にすれば前に進める、というのが常識だ。だが実際には、目標を高く掲げるほど、いまの自分との距離ばかりが目に入り、足が止まってしまうことがある。なぜ、意欲的な人ほど挫けやすいのか。その原因は、野心の「かたち」そのものにある。書籍『予想だにしないほど人生が大きく動き出す 小さな実験』をもとに解説する。
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「遠い目標」を設定してしまう
上期・下期の初め立てた目標や年の初めの目標を、1ヶ月後にはすっかり忘れている。仕事の目標達成、資格の勉強、副業、ダイエット、転職。どれも本気で達成したいと思っていたはずなのに、なぜか続かない。多くの人はそれを「意志が弱いから」だと考える。
しかし、問題は意志の強さではなく、目標の立て方のほうにあるのかもしれない。
(『予想だにしないほど人生が大きく動き出す 小さな実験』より)
ここで指摘されているのは、目標を持つこと自体が悪いということではない。意欲を一点のゴールに結びつけたとき、その地点が遠ければ遠いほど、現在地とのギャップが際立ってしまうということだ。
「まだ足りない」が毎日を支配する
ゴールを一点に定めると、それ以外の状態はすべて「未達成」になる。年収1000万円を目指す人にとって、年収600万円の自分は「400万円足りない人」でしかない。フルマラソン完走を目指す人にとって、5キロ走れた日は「まだ37キロ足りない日」になる。
本来なら喜んでいいはずの前進が、ゴールという物差しで測られた瞬間に「不足」へと変わってしまう。毎日少しずつ進んでいるのに、毎日「足りない」と確認し続ける。これでは、やる気が削られていくのも無理はない。
しかも、一直線にゴールを目指すという考え方は、途中で方向を変えることを「挫折」とみなしやすい。やってみて違和感を覚えても、引き返すことは負けを認めるように感じられる。こうして、合わない道を無理に進み続けるか、すべてを投げ出すかの二択に追い込まれてしまう。
終着点ではなく、「次の一歩」を問う
では、どうすればいいのか。ひとつの方法は、意欲の向け先を「到達点」から「問い」へと移すことだ。
「年収1000万円になる」ではなく、「自分はどんな仕事に手応えを感じるのか」を確かめる。「フルマラソンを完走する」ではなく、「2週間、朝に走ってみたら何が変わるか」を試す。期間を区切った小さな試みであれば、結果がどうであれ、そこから何かを学べる。うまくいけば続ければいいし、合わなければやめて別の方法を試せばいい。どちらに転んでも「失敗」にはならない。
このやり方の利点は、評価の軸が「どれだけゴールに近づいたか」から「何がわかったか」に変わることにある。現在地とゴールの距離を測る必要がなくなるので、挫けるきっかけそのものが減っていく。
大きな目標を捨てる必要はない。ただ、それを毎日の自分を裁く物差しにしないことだ。遠くの一点を見つめて立ちすくむより、目の前でできる小さな試みに手をつけてみる。そして、その結果を観察する。
前に進むために必要なのは、遠いゴールを見据え続けることではない。今日できる小さな一歩を試してみることだけでいい。




