完璧を求めすぎて仕事を終えられない。やらなければいけないことを先延ばししてしまう。そんなときの対処法を、『おい、とりあえず終わらせろ』の著者、nwiizo(ぬうぃぞう)氏が伝えます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
見た目は整っていても出せない
部下からの相談に答え、会議を終え、ようやく自分の資料を作る時間ができた。締め切りは明日。少しでも時間を短縮しようと、AIに構成案やスライドを作ってもらう。
確かに、白紙だった画面は埋まります。見出しも説明文も揃っている。けれど、読み返すと何かが違う。
「この提案で、上司は納得するだろうか」
「現場の負担を考えると、本当に実行できるのか」
「そもそも、今回は何を優先すべきなのか」
直してほしい点をAIに伝える。また案が返ってくる。何度か繰り返しているうちに、文章は整ったのに、肝心の結論が決まっていないことに気づく。
たくさんの業務に追われている人ほど、そんな経験はないでしょうか。
上司が求める成果も、部下の抱える事情も見えている。だからこそ、見栄えのいい資料ができただけでは、そのまま出せないのです。
そこで考えたいのが、「難しさの種類」です。
「正しい答え」を探し続けてしまう
難しさには、「資料を形にする難しさ」と「何を提案するかを決める難しさ」という2種類があります。
料理にたとえると、前者はレシピに沿って作る難しさ、後者は何を作るかを決める難しさでしょうか。
手順や分量が決まっていれば、わからないところを調べながら進められます。一方、目の前の食材、お客さんの好み、季節、予算を踏まえて献立を決めるときは、条件によって答えが変わります。
仕事も同じです。資料の体裁を整える方法は調べられても、「今回、何を優先して提案するか」は、関係者の事情を踏まえて判断しなければなりません。
ですが、例えば新規事業の戦略を考えるときは、たった1枚の企画書でも手が止まることがあるでしょう。書く量が少なくても、決めることは簡単ではないからです。
ここで「どこかに正しい答えがあるはずだ」と探し続けると、案や情報ばかりが増えていきます。
その場合は、AIを使うときも、完成された正解を求め続けるより、判断するための叩き台を出してもらう方が役立つことがあります。
AIの案に「これじゃない」と思ったところから始める
私はよく、いきなりスライドを作らず、AIに「施策案の骨子」を5案出させることがあります。
最初に出てきた案は、陳腐なものでした。でも、それらを見て「数字の比較が薄い」という欠点に気づけた。その瞬間、自分が集めるべき指標が明確になりました。
白紙の画面に向かうと、「最初から正しいものを書かなければ」と身構えてしまうことがあると思います。ところが、粗い案があれば、「ここは違う」「この比較が足りない」と考えられます。
このように、「ゼロから作る」より「ダメなものを直す」方が圧倒的に楽なのです。
AIに担ってもらうのは、「ツッコミの的」を提供する役割です。粗い提案にツッコミを入れること自体が、手を動かす導火線になりました。
ぜひ、AIに完成案を作らせるのではなく、粗い骨子を出してもらってみてください。
それを見て「何が違うか」「何が足りないか」を認識できたとき、ゴールが近づくはずです。
本書の内容
まえがき 完璧を目指して、今日も終わらなかった
「もう少し良くしてから」の罠
「60点で出す」という革命
私たちには「終わらせる技術」が必要だ
第1章 おい、部屋を掃除しろ ―― 「完了」の正体を知る
「擬似完了感」のループに陥ってはいけない
「部屋の掃除」は終わらせるための小さな練習 ―― 小さな完了は複利のように効く
「わかってから出す」は動かない言い訳
あなたの「まだ60点」は、相手の「もう十分」かもしれない
「真面目な完璧主義」は「怠惰な先延ばし癖」と同じ
「良い」の基準を自分の中だけにとどめるな
先延ばしは「明日の自分への丸投げ」で進行する
「今日こそ頑張ろう」を繰り返さないための5ステップ
第2章 おい、やることを絞れ ―― ステップ1「決めろ」
何も聞かないまま2週間過ごすな
スコープを絞れ
「良い感じ」は測れないから終了条件を言語化する
ゴールは近い未来に置く
60点とは妥協ではなく「何を捨てるかを選ぶ」こと ―― 優秀なエンジニアも「諦めること」を決めて動く
早く聞く人が一番偉い ―― 「この方向で合ってますか?」を最初の30分で聞く
「山の間で立ちすくむロバ」になるな ―― 「十分良い」を選ぶ
小さな決定を頭の外に出す
第3章 おい、完了を祝え ―― ステップ2「分けろ」
やるべきなのに手が動かないのは、タスクがでかすぎるから ―― 「根性」より「構造」を疑え
「ただ手を動かせば終わる作業」に悩まないために ―― 「わからなさ」には5つの層がある
「全部わからない」は、書き出す前の幻想
完了を祝え
自分の「動ける粒度」を知る
動いたから見えた問題は前進の証拠
第4章 おい、手を動かせ ―― ステップ3「始めろ」
完璧な準備は、永遠に来ない ―― 方向だけ確認してから走れ
やる気を待つな ―― でも、体調は本当に大事だ
「本来の自分」という幻想を捨てる ―― 言語化も60点でいい
無駄かどうかの「判断そのもの」を消す環境設計
「美しい暮らし」の話にしないこと
「馬鹿げた小ささ」が効く ―― 「毎日30分」が失敗を作る
完璧主義者こそ、AIに叩き台を作らせろ
思わず始めてしまう「トリガー」を設定せよ
「失敗しても致命傷にならない構造」を先に作る
通知を切れ、視野を狭めろ ―― 「どうせ何をやっても変わらない」という冷笑は完璧主義の変形
第5章 おい、60点で出せ ―― ステップ4「出せ」
成果物と人間の価値は別物 ―― 「もし後輩がこれを出してきたら?」と想像する
シンプルなものをシンプルなまま出せ ―― 「早く終わってしまった気まずさ」を超える
早めのフィードバックは自分の死角に気づかせてくれる ―― アウトプットの質を落とす記憶の書き換えに抗う
「評価されたい」と「60点で出す」は両立する
助けが必要な状態を、ひとりで抱え込まない ―― 「60点で出す」のを許されるための関係性の作り方
「後戻りできないポイント」を外さない ―― 完了が先、改善は後
第6章 おい、いいからやり直せ ―― ステップ5「回せ」
「未来に向けたアドバイス」を受け取れ ―― 相手を評価者モードから助言者モードに変える問い
場当たり的な改善は「言葉の裏」を読むことで防げる
フィードバックの価値は受け手の準備で半分決まる ―― 解決法ではなく問題を言語化する
1回のフィードバックから10回使える原則を抜き出せ ―― 「自分は成長している」という感覚に騙されない
優れたチームは「誰が悪かったか」を問わない ―― 感情の処理と構造の理解を分ける
100回夢見るより60点で3回出せ
小さな成功が「地味な確信」を育てる ―― 「高揚感のある自信」より「地味な確信」
失敗など構わない ―― 仮説があれば
あとがき ―― あなたが終わらせたものを、誰かが待っている
私のおすすめの本を紹介します ―― とりあえず終わらせるために効く本たち