英語、ドイツ語など世界9か国から翻訳オファーが殺到しているベストセラー『「悩まない人」の考え方――1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』から、「悩まない人とカッとなる人の差」についてライター前田浩弥氏に寄稿いただいた。悩まない人の「頭の中」では、一体、何が起こっているのか? (構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)
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「心の支え」を割ってしまった日
気に入っていた皿を割ってしまった。
4年前、引っ越しを機に、茶碗や平皿、コーヒーカップといったほかの食器と色を合わせて買った深皿だ。安物だが、深みのある青色が自分好みだった。カレーを盛ってもパスタを盛ってもしっくりきた。いちばんよく使っていたので愛着も深かった。
ちょっと嫌なことがあった日も、この皿で食事をとると、不思議と気持ちが浄化されていくような気がした。しかし、その心の支えを割ってしまった。
皿を割ったのは昼間だった。クヨクヨとした気分のまま午後を過ごし、夜になって、気分を変えようと飲みに出た。
30分ほど飲んだ後、トイレに立ち、用を足そうとすると、目の前に「お坊さんがいいことを言っている風」の言葉が書かれた日めくりカレンダーが掛けてある。
その日の言葉は、よりによって、こうだった。
「皿が割れたのではない。皿を割ったのです」
うるせぇ、わかってるわ。カレンダーに憤ると同時に、収まりかけていたクヨクヨがまたぶり返してきた。
「よくない感情」が招く悪循環
気分を変えるために出向いた居酒屋で、私はかえって、クヨクヨとした気分を掘り返してしまった。
しかし落ち着いてこの日の出来事を振り返ってみれば、自分をクヨクヨとさせているのは、割ってしまった皿でも、「お坊さんがいいことを言っている風」のカレンダーでもなく、自分自身にほかならない。
話は、「なぜ気に入っている皿を割ってしまったのか」にさかのぼる。
考え事をしながら洗い物をしていたからだ。
仕事で行き違いがあり、相手の方とメールのやりとりで、ちょっとした口論となってしまった。
仕事で生じた行き違いは、お互いの勘違いが原因だったのだが、相手は自分の不足を棚に上げ、こちらが至らなかった部分を一方的に責めてくる。しかもネチネチと、回りくどく、嫌味ったらしくだ。「言いたいことがあるなら、まっすぐはっきり言えばいい」。そんな思いが、苛立ちを増幅させた。
そして、その苛立ちを抱えながら皿を洗っていたところ、手を滑らせて皿を割ってしまったのだ。
よくない感情をいつまでも引きずるあまり、さらによくない出来事が生まれ、それによって、またさらによくない感情が芽生える。絵に描いたような悪循環にハマってしまった一日なのだった。
出来事は変えられないが、「受け止め方」は変えられる
「悩まない人」は、どう気持ちを切り替えているのか。
『悩まない人の考え方』には、著者の木下勝寿氏が映画館で経験したエピソードが紹介されている。
木下氏が座っている席の隣に、若いカップルが座った。
男性は恋人と話すのに夢中になるあまり、持っていたコーヒーを木下氏のダウンジャケットにこぼしてしまう。しかし男性はそれに気づくことなく、恋人と話し続けている。
木下氏は男性に、コーヒーが服にかかった旨を伝えたが、男性は「はあ……どうも」と返すだけで、謝罪もせず恋人と話し始めたという。
さすがに腹が立ち、「クリーニング代を請求してやろうか」とも考えたという木下氏だが、数分後には気持ちを切り替え、映画を楽しんでいた。そして結局、クリーニング代を請求することも、謝罪を要求することもなく、汚れたままのダウンジャケットを着て、映画館を出た。
気持ちを切り替えるに至った心の動きを、木下氏はこうつづっている。
その若いカップルはもちろん、まわりのお客さんたちも、私のそんな気持ちに気づくことなく、スクリーンを観ながら映画を楽しもうとしている。その中でただ一人、私だけが自分の心のスクリーンに映った「腹立たしい出来事」を見つめ、勝手に怒りの感情を生み出そうとしている。
――『悩まない人の考え方』より
ならば、この状況を「腹立たしい出来事」として受け取るのをやめたほうが手っ取り早い――。木下氏はこう考え、怒りの感情を処理した。
そう。起きてしまった出来事そのものは変えられないが、それをどう受け止めるかは、自分で選ぶことができるのだ。
「悩まない人」とは、「嫌な出来事に遭遇しない人」ではない。「起きたことに心を奪われ続けるのではなく、自分の受け止め方を変え、前を向ける人」なのだと、『悩まない人の考え方』は教えてくれる。






