職場には「悩みを抱えがちな人」と「全然悩まない人」がいる。一体、何が違うのだろうか?
そのヒントを教えてくれるのが、ビジネスパーソンから経営者まで数多くの相談を受けている「悩み解消」のスペシャリスト、北の達人コーポレーション社長・木下勝寿氏の新刊『「悩まない人」の考え方』だ。今回は、仕事の現場でよくある悩みやトラブルに対する、木下氏の回答を紹介する。(聞き手/『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者 安達裕哉氏、構成/ダイヤモンド社コンテンツビジネス部)

上司と部下の「調整」は必要ない
Q. 中間管理職になりましたが、上司と部下の板挟みになっていて、バランスのとり方に悩んでいます。ネットでは、中間管理職は「罰ゲームだ」と表現されることもありますが、どうすればこの悩みを解消できるでしょうか?
木下勝寿(以下、木下) これについては、そもそも悩むべき事柄ではありません。
一般に、「上司と部下の板挟み」状態で悩んでいる中間管理職の話はよく聞きますが、私からすると、中間管理職の役割を根本的に「勘違い」しているのではないかと思います。
まず、中間管理職というのは、上級管理職と部下の意見を「調整」するのが仕事ではありません。
――では、中間管理職のミッションとは何でしょうか?
木下 経営陣の方針をもとに、それを達成するための戦略・作戦を立てるのが上級管理職の仕事です。それに対して、中間管理職の役割は、上級管理職の戦略・作戦を部下に伝達することになります。
それと同時に、中間管理職は、自分の部下にその戦略・作戦を実行させ、必要に応じてサポートするのが一義的な責任になります。この2つの職務を果たすうえで、上司と部下の「調整」という要素はありません。
ダメな管理職ほど、自分の仕事を「罰ゲーム」と言いがち
木下 一方で、部下の実行を通じて、上級管理職が策定した戦略・作戦が正しくないことがわかってくることがあります。
この場合、中間管理職は、部下からの情報と上司の意向をもとに、自分の見解をまとめないといけません。そのうえで、戦略・作戦を修正すべきだという結論に至ったら、上級管理職にその考えを伝えるのがミッションになります。
このミッションにおいても、上司と部下の板挟みになることはありません。なぜなら、上司に伝えるのは部下の情報そのままではなく、それを受けて自分が練り上げたオリジナルの見解だからです。
なので、「板挟みになっている」と感じている時点で、中間管理職としての職責を勘違いしている可能性があります。逆にいうと、中間管理職の役割をきちんと理解していれば、上司と部下の板挟みになるような事態は起こらないんです。
ちなみに、中間管理職の仕事を「罰ゲーム」などと言うのは、「責任をとる=罰を受ける」ことだと思い込んでいる人だと思います。
しかし、管理職というのは「責任者」ですから、責任をとるのは当たり前です。この点を勘違いしてはいけないですね。
(本稿は、『「悩まない人」の考え方』の著者・木下勝寿氏へのインタビューをもとに構成しました)