英語を勉強しているが、英会話の上達を実感できない――そんな人に試してほしい1冊が『中学英語だけで面白いほど話せる!見たまま秒で言う英会話』だ。「イラストを見る→見たままを英語にする」を繰り返すことで、日本語を介さず瞬時に答える「英語の反射神経」を鍛えることができる。本稿では、著者の森秀夫さん(麗澤大学外国語学部教授)に、句読点のない英文を使って、「会話が成り立つ仕組み」を教えてもらった。

たった24語の英会話。最後の一語で、あなたの「思い込み」が変わるPhoto: Adobe Stock

まずは解説なしで、会話を読んでみてください

 イギリス留学中、授業で句読点のない英文を渡されたことがあります。初めは戸惑いましたが、読み進めるうちに、短い言葉が一つの会話としてつながってきました。

 その体験をヒントに、今回はケーキ店での会話を用意しました。店員がA、客がBです。ピリオドも、クエスチョンマークも、エクスクラメーションマークもありません。まずは解説を読まず、何の話をしているのか考えてみてください。

 A: Cake
 B: Please
 A: Birthday
 B: Yes
 A: Name
 B: Max
 A: Age
 B: Five
 A: Size
 B: Large
 A: Chocolate
 B: No
 A: Cream
 B: No
 A: Candles
 B: No
 A: Guests
 B: Twelve
 A: Children
 B: No
 A: Adults
 B: No
 A: Then
 B: Dogs

 最後まで読んで、「え?」と思ったでしょうか。思ったなら、それがこの英文のねらいどおりです。

【クイズ】句読点を入れてみましょう

 全部で24語。一語ずつしか言っていないのに、話の筋は追えたはずです。

 ここで一つ、作業をしてみてください。

 各行に「.」「?」「!」のどれを付けるか、自分で決めてください。

 たとえば「Cake」。「Cake?」でしょうか、「Cake.」でしょうか。「Please」は? 「Then」は? そして最後の「Dogs」に付けるのは、「.」でしょうか、「!」でしょうか。

 紙に書いて考えてもいいですし、頭の中で読み上げながら考えてもかまいません。正解を急がず、「なぜその記号にしたのか」を自分に説明できるかどうかを確かめてください。解答例はこの記事の最後に示します。

句読点がなくても読めるのはなぜか

 句読点がなくても話の筋を追えるのは、「ケーキ店での注文」という場面と、直前のやりとりが手がかりになるからです。

 Size?
 Large.

「Size」のあとに「Large」が来れば、大きさを尋ねて答えていると分かります。場面が、言葉の足りない分を埋めてくれるのです。

 そしてもう一つ。この英文が読めてしまうという事実は、話し言葉がもともと句読点なしで成り立っていることを示しています。実際の会話では、記号の代わりに、声の調子や間、表情が手がかりになります。私たちは言葉だけでなく、こうした手がかりも使って意味を理解しているのです。

この英文で気づいてほしかったこと

 クイズをやってみて、何が起きていたかを振り返ってみましょう。

 第一に、完全な文に直さなくても、意味は分かりました。

「Cake」に「?」を付けるとき、「Would you like to order a cake?」という文を頭の中で完成させる必要はありません。ケーキ店で、店員が客に話しかけている。その状況から、注文について尋ねていると推測できます。

 第二に、最後の一語で、思い込みが書き換わりました。

 最後の「Dogs」で、招待客が犬たちだと分かります。すると、マックスも犬で、犬の誕生日会を開くのだと考えられます。

「Five」と聞いて、5歳の男の子を思い浮かべた人もいるでしょう。店員も、誕生日会の招待客は人間だと思って、「Children?」「Adults?」と尋ねていたのでしょう。チョコレートやろうそくを断ったやりとりも、ここで別の意味を帯びてきます。

 ※チョコレートは犬に有害です。

 ここでは、単語や文法の知識に加えて、文脈から意味を推測し、必要なら修正する力も働いています。

 第三に、記号の代わりに、頭の中で声が響いていました。

 最後の「Dogs」に「.」と「!」のどちらを付けるか迷った人は、頭の中で二通りの読み方を試していたはずです。紙の上では記号が担っている役割を、実際の会話では声の調子が担っています。

完璧な文を作ってから話していませんか?

 英語を話す前に、頭の中で文を完成させようとしていませんか。主語を考え、動詞を選び、時制を確かめる。そのうちに、話すタイミングを逃してしまうこともあります。

 知っている英語があるのに口から出てこないなら、「文が完成するまで話し始めない」という習慣も、一つの原因かもしれません。

 この英文が示しているのは、文を完成させなくても会話はできる、ということです。一語でもいいのです。

 Birthday?「誕生日用ですか?」

 Twelve.「12匹です」

 この会話では、一語ずつのやりとりでも、ケーキの大きさや、チョコレートとクリームは使わず、ろうそくも付けないこと、招待客の数まで伝わっています。もちろん実際の注文なら、受け取りの日時や値段も確かめるでしょう。これは、一語でどこまで伝えられるかを体験するための会話です。

短く話すほど、声が仕事をする

 一語で済ませるなら、その一語に声の表情を乗せることになります。

「Chocolate?」「Cream?」「Candles?」に、続けて「No」と答える場面を思い出してください。同じ一語でも、短くきっぱり言うのか、柔らかく言うのかで、相手が受ける印象は変わります。

 もう一つ。相手の言葉が短くても慌てないことです。

 Then?「では、どなたが?」

 直前の「Children?」「Adults?」を受けているので、一語でも何を尋ねているのか推測できます。少し間を置いて語尾を上げると、店員の戸惑いや問い返す気持ちが伝わりやすくなります。ただし、英語では、質問だからといって必ず語尾を上げるわけではありません。

 聞くときと同じように、話すときも文脈を頼りにできます。相手と共有できていることは、毎回すべて言い直さなくてもよいのです。

【解答例】句読点を入れると、こんな会話になる

 最後に、句読点を入れた形を示します。自分の答えと見比べてみてください。違っていた行があれば、そこがこの英文の一番面白いところです。

 A: Cake?
 B: Please.
 A: Birthday?
 B: Yes.
 A: Name?
 B: Max.
 A: Age?
 B: Five.
 A: Size?
 B: Large.
 A: Chocolate?
 B: No.
 A: Cream?
 B: No.
 A: Candles?
 B: No.
 A: Guests?
 B: Twelve.
 A: Children?
 B: No.
 A: Adults?
 B: No.
 A: Then?
 B: Dogs!

 最後の「Dogs!」を「Dogs.」にした人もいるでしょう。どちらも成立します。淡々と事実を告げるのか、得意げに明かすのか。紙の上では記号で表すその違いを、実際の会話では話し手の声が伝えるのです。

声に出すと、会話が動き出す

 最後に、次の二つを声に出してみてください。

 A: Cake?
 B: Please.

 Aは「ケーキをご注文ですか」と確かめるつもりで。Bは「お願いします」と笑顔で答えるつもりで。同じ一語でも、相手に向けて言うと、ただ単語を読むときとは声が変わるはずです。

 二人で練習できるなら、役を交代してみましょう。最後の「Dogs」も、淡々と伝えたり、うれしそうに明かしたりしてみてください。

 完全な文がすぐに出なくても、相手の言葉を受けて、今言える短い表現で返してみる。その一言が、次のやりとりにつながります。