ノーベル賞の登竜門・ラスカー賞受賞で話題! 睡眠学の世界的権威・柳沢正史教授が、最新研究をもとにやさしく解説した著書『世界最高の睡眠学が教える 睡眠の正解』が話題です。巷にあふれる睡眠の常識・思い込みの真偽を解き明かしつつ、「眠れない」「起きられない」「寝ても疲れがとれない」といった悩みの解消法を提唱します。あなたが本来の自分を取り戻し、よりよい明日を迎える睡眠のヒントをお届けします。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・中村直子)
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平日寝不足の人は、年間13万円以上失っている
「最近、なんとなく仕事の調子が出ない」「集中力が続かない。ミスが増えた」「昔のようにバリバリ働けなくなった」
そう感じている方はいないでしょうか?
その不振、ひょっとすると、あなたの能力や年齢のせいではないかもしれません。睡眠不足が、あなたから本来の実力を奪っている可能性が大いにあります。しかも、その損失は、あなたが想像している以上に大きい。
いきなりですが、ドキッとする数字をお伝えします。
日本では睡眠リズムの乱れによって、約16%の人が年間およそ13万6000円分の労働生産性を失っています。私たちの研究チームの分析から、そんな結果が見えてきたのです。この数字は、日本人の平均年収をもとに試算しています。
会社は給料を払っている。あなたも出勤している。ところが、睡眠リズムの乱れによって集中力や判断力が落ちてしまう。
あなたが本来発揮できるはずの力をお金に換算すると、毎年13万円分以上が、発揮されないままになっている。会社にとっても、何よりあなた自身にとっても、決して無視できる数字ではありません。
体内時計を狂わせる社会的時差ボケとは?
ここでいう睡眠リズムの乱れとは、平日の睡眠不足を解消しようとして、休日に朝寝坊して体内時計が狂ってしまう、“社会的時差ボケ(ソーシャルジェットラグ)”を指しています。平日と休日で睡眠のリズムが大きくずれることが、シビアに影響しているのです。
このずれは、起きる時刻だけを見るより、“睡眠中央時刻”で考えるとよくわかります。睡眠中央時刻とは、文字どおり、眠っている時間帯のちょうど真ん中の時刻です。
たとえば、平日は深夜0時に寝て、朝6時に起きるとします。この場合、睡眠中央時刻は午前3時になります。
ところが金曜の夜には、次の日が休みだからと午前2時まで起きていて、土曜は昼の12時まで寝たとしましょう。こういった週末を送っている人は少なくないと思いますが、この場合、睡眠中央時刻は午前7時です。
平日は午前3時。休日は午前7時。その時差は4時間あります。
4時間といえば、日本とパキスタンあたりの時差です。実際にはどこにも行っていないのに、金曜の夜にパキスタンあたりまで飛び、月曜の朝に日本へ戻ってくる。体の中では、それに近い時差ボケが毎週起きているわけです。
飛行機に乗ったわけではありません。しかし、仕事や学校に合わせた社会的なスケジュールによって体内時計が時差ボケを起こしている。だから社会的時差ボケ(ソーシャルジェットラグ)と呼ばれるのです。
筑波大学を中心とした私たちの研究チームは、睡眠ゲームアプリ『ポケモンスリープ』の国内利用者のうち就業者(子ども、学生を除く)およそ8万人(200万晩以上)の睡眠データを分析しました。世界でも類を見ない大規模なデータセットです。
日本人の睡眠パターンを5つのタイプに分類し、それぞれの労働生産性との関係を調べたところ、もっとも生産性が低かったのが、社会的時差ボケ型でした。
会社に出勤しているのに本来の実力を発揮できていない状態を、専門用語で“プレゼンティーズム”といいます。その人の給料がどれだけ本来の働きに見合わない形で支払われているかを、お金に換算することができるのです。
この手法で計算した結果、健康的な睡眠を取れている方と比べて、社会的時差ボケ型の方は1人あたり年間13万6000円分の生産性損失に相当することがわかりました。『ポケモンスリープ』のユーザーが日本を代表すると仮定すれば、日本全体で1兆円の損失です。








