「部下のために一生懸命働き、積極的にコミュニケーションを取っている。それなのに、なぜか部下から信頼されない。そんな悩みを抱える管理職は少なくありません。実は、部下の信頼を失う原因は、厳しい叱責や高圧的な態度だけではありません。多くの上司が無意識に繰り返している、ある「小さな行動」が問題なのです。外資系企業と日本企業で人事責任者を務め『冷えた組織を熱くする リーダーの切り札』を上梓した南和気氏が解説します。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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「いいことを言う上司」が信頼されない理由
「何か困ったことがあったら、遠慮なく相談してほしい」
「これからは、みんなが自由に意見を言えるチームにしたい」
部下との信頼関係を築こうと、こうした言葉をかけている管理職は多いのではないでしょうか。
しかし、どれだけ熱心に語りかけても、部下の反応は薄い。会議で意見を求めても誰も発言せず、1on1でも当たり障りのない話しか出てこない。
なぜ、上司の思いは部下に伝わらないのでしょうか。
私は、外資系企業と日本企業の双方で、20年以上にわたって管理職を務め、多くの管理職の育成にも携わってきました。
その経験からお伝えしたいのは、部下の信頼を失うのは、必ずしも大きな失敗をしたときではないということです。
むしろ、日常の何気ない行動の積み重ねによって、部下の心は少しずつ離れていきます。
なかでも、管理職に特に気をつけてほしいNG行動があります。
それは、「小さな約束を守らないこと」です。
「あとで確認するよ」が部下の信用を壊している
例えば、部下から相談を受けたとき、こんな返事をしていないでしょうか。
「その件は、部長に話しておくから」
「来週までに返事するね」
上司としては、部下を安心させようとして言った言葉かもしれません。
しかし、日々の業務に追われ、確認を忘れたり、返事を後回しにしたりすることがあります。
上司にとっては数ある仕事の一つにすぎないかもしれませんが、部下はその言葉を必ず覚えています。
「相談したのに、何もしてくれなかった」「結局、口だけなんだな」
こうした経験が重なると、部下は次第に上司を頼らなくなります。
そして、表面上は従順に振る舞いながらも、心の中では「この人に相談しても仕方がない」と諦めてしまうのです。
これが、チームの空気が冷めていく原因の一つです。
「信用」と「信頼」はまったく違う
ここで知っておきたいのが、「信用」と「信頼」の違いです。
信用とは、過去の実績や約束を守った経験によって積み上がる評価です。
一方、信頼とは「この人についていけば大丈夫だ」という未来への期待です。
つまり、部下から信頼されるためには、まず信用の土台が必要なのです。
マネジメントの分野には、コンサルタントのチャールズ・グリーンらが示した「信頼の方程式」という考え方があります。
約束したことを実行する「一貫性」、仕事に必要な「専門性」、相手との「親密さ」を高め、自分の都合ばかりを優先する「利己心」を小さくすることが、信頼関係の構築につながります。
この観点から考えると、いくら立派なビジョンを語っても、普段から約束を守らない上司の言葉が響かないのは当然でしょう。
部下は、上司が何を言っているかだけでなく、「言ったことを本当に実行しているか」を見ているからです。
部下の信頼を取り戻すために、明日からできること
では、管理職は何から始めればよいのでしょうか。
私は、まず3つの行動を意識してほしいと思います。
第一に、小さな約束ほど徹底して守ることです。できない約束は安易に引き受けず、一度引き受けたことには責任を持ちます。
第二に、上司だからこそできる役割を果たすことです。経営層との調整や他部署との交渉など、部下だけでは難しい仕事を引き受け、結果につなげます。
第三に、部下の意見や不安を、すぐに否定しないことです。たとえ自分と異なる意見でも、まずは最後まで聞き、相手の考えを理解しようとする姿勢が大切です。
部下は、自分の話を聞いてもらえていると感じて初めて、上司の言葉にも耳を傾けるようになります。
管理職は、チームを変えようとするとき、つい大きなビジョンを語ったり、新しい制度を導入したりしたくなるものです。
しかし、その前にやるべきことがあります。
部下の心を動かすのは、立派な言葉ではなく、日々の小さな行動です。
「あとでやっておくよ」と言ったことを、きちんと実行する。
そんな当たり前の積み重ねこそが、冷めた組織を変える第一歩になるのです。





