「部下には定時退社を促すのに、自分だけ残業」「パワハラが怖くて注意できない」。部下のために頑張っているのに、なぜか部下は育たず、チームの雰囲気も冷めていく。その原因は、管理職の能力不足ではなく、意外なところにある。外資系企業と日本企業の双方で人事責任者を務めてきた現場の問題を見るプロフェッショナルで『冷えた組織を熱くする リーダーの切り札』の著者である南和気氏が解説する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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上司だけが残業する「謎」
「課長、お先に失礼します! 資料は共有フォルダに入れておいたので、確認お願いします」
部下を笑顔で送り出し、資料を開いてみると、肝心の数字が抜けている。内容も粗く、このままでは到底提出できない。
本来なら、部下に差し戻すべきだろう。
しかし、今は働き方改革の時代だ。
残業をさせるわけにもいかないし、厳しく指導して「パワハラ」と受け取られるのも怖い。
「仕方ない。自分で直したほうが早いか……」
そうつぶやいて、部下が残した仕事を黙々と片づける。
こんな経験をしたことがある管理職の方は、少なくないのではないでしょうか。
しかも、上司自身がプレイングマネジャーとして数字を追いかけている場合も多いでしょう。
部下がミスをすれば責任を問われ、エンゲージメント調査の結果が悪ければ「マネジメント不足」と指摘される。
部下には優しく、自分には厳しく。
それなのに、部下から感謝されるわけでもなく、チームの士気も上がらない。
「いったい何のために管理職になったんだろう」
そう感じている方もいるでしょう。
「優しい上司」が部下の成長を奪っている
ここで、厳しい現実をお伝えしなければなりません。
部下の仕事を肩代わりすることは、必ずしも「優しさ」ではないということです。
なぜなら、上司が仕事を巻き取れば巻き取るほど、部下は自分で考え、試行錯誤し、成長する機会を失ってしまうからです。
上司が部下の仕事を引き取れば、部下はいつまでも育ちません。だから必然的に、次の仕事も上司が引き取る。
こうして、終わりのない悪循環が生まれるのです。
ところが、管理職本人は決して手を抜いているわけではありません。むしろ、誰よりも一生懸命に働いています。
だからこそ、この問題は厄介なのです。
日本企業は「管理職のやり方」を教えてこなかった
では、なぜこうした事態に陥るのでしょうか。
私は、その根本的な原因の一つが、日本企業の管理職育成のあり方にあると考えています。
多くの管理職は、プレイヤーとして優秀な成果を上げたからこそ昇進しています。
しかし、営業でトップの成績を出す能力と、部下の能力を引き出す能力は、まったく別物です。
それにもかかわらず、会社からは「覚悟を持て」「率先垂範しろ」と言われるだけで、具体的なマネジメントの方法を十分に教わっていないケースがあるのです。
結果として、管理職は自分が若手だった頃の経験に頼るしかなくなります。
「俺の若い頃はこうだった」「背中を見て覚えてもらえればいい」
しかし、働く人の価値観が多様化した今、かつての成功体験だけで部下を動かすことには限界があります。
つまり、管理職に足りないのは、熱意や根性ではなく、マネジメントの「手札」なのです。
部下を動かすのに「カリスマ性」はいらない
ここで知ってほしいのは、マネジメントは生まれ持った才能ではない、ということです。
心理学や行動科学などの知見を土台として、世界の企業で活用されてきたマネジメントの理論や技術があります。
信頼関係の築き方、部下に応じた接し方、成長を促すフィードバック、主体性を引き出す対話、適切な権限委譲。
こうしたスキルは、学び、実践することで必ず身につけていけるものです。
「自分が頑張れば、チームもうまくいくはず」
もし、そう信じてきたのなら、今日から考え方を変えてみてほしいのです。
管理職の仕事は、自分が誰よりも働くことではない。部下が力を発揮し、チームとして成果を出せる状態をつくること。
そのゴールをぶらさないことが大切です。
そのために、世界で成功した実績のあるマネジメントの理論を、自身の状況にあわせて適用させていく。
それが、疲弊する管理職から抜け出す最初の一歩になるはずです。





