「できる人にどんどん仕事が集まる」。多くの職場で見られる光景ですが、優秀な社員ほど不満を抱きやすい原因は、仕事量だけではありません。実は、上司が良かれと思って設定した「目標」が、部下のやる気を奪っていることがあります。外資系企業と日本企業で人事責任者を務め『冷えた組織を熱くする リーダーの切り札』を上梓した南和気氏が解説します。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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目標の「量」に注意
「この案件は、彼に任せれば安心だ」
「あのプロジェクトも、彼女ならきっと成功させてくれる」
管理職なら、優秀な部下に重要な仕事を任せたくなるのは自然なことでしょう。
しかし、気づけば、その部下だけがいくつもの案件を抱え、通常業務に加えて新人の指導や他部署との調整まで担当している。
それなのに、人事評価では「標準」や「期待通り」という結果にとどまってしまう。
これでは、部下が「仕事ができるほど損をする」と感じても不思議ではありません。
実は、こうした不公平感を生み出す原因の一つが、「優秀な部下に、たくさんの目標を設定してしまうこと」です。
何を頑張ればいいかわからない
例えば、営業成績のよいエース社員に、こんな目標を設定していないでしょうか。
個人の売上目標、新規顧客の開拓、既存顧客の維持、後輩の育成、業務改善、他部署との連携……。
「仕事の抜け漏れを防ぎたい」「優秀だからこそ、幅広く活躍してほしい」
そんな思いから、あれもこれもと目標を追加してしまうのです。
しかし、目標がいくつも並んでいたら、部下は何を最優先すべきなのかわからなくなります。
そして優秀な人ほど、すべてをこなそうとして重要な仕事に十分な時間を使えなくなることもあるでしょう。
さらに問題なのは、目標が増えたからといって、評価が高くなるとは限らないことです。
仕事をたくさん任された結果、いくつかの目標が未達成になれば、かえって評価が下がってしまう可能性さえあります。
優秀な部下に多くの目標を課すことは、必ずしも公平な評価につながらないのです。
優秀な上司は、部下の目標を「5つ以内」に絞る
では、どうすればよいのでしょうか。
私がおすすめしたいのは、個人の目標を「5つ以内」に絞ることです。
大切なのは、任せている仕事をすべて目標として列挙するのではなく、組織の戦略に直結する重要な成果を見極めることです。
例えば、営業担当者なら、売上目標に加えて、今期最も重要な新規市場の開拓や、次世代リーダーとしての育成課題などに絞ります。
一方、日々の細かな業務を管理したい場合は、それらを「オペレーション目標」として一つにまとめ、チーム共通の目標にする方法もあります。
こうすれば、重要な仕事に力を集中しながら、通常業務も適切に管理できます。
ただし、目標の数を減らすだけでは不十分です。
それぞれの目標について、「何を、どこまで達成すれば評価されるのか」を明確にする必要があります。
「頑張ったのに評価されない」を防ぐSMARTの法則
そこで役立つのが、「SMARTの法則」です。
SMARTとは、目標を具体的で測定可能なものにし、達成可能性や組織目標との関連性、期限を明確にする考え方です。
例えば、「後輩の育成に積極的に取り組む」という目標では、何をすれば達成したことになるのかが曖昧です。
それよりも、「半年後までに後輩が単独で顧客への提案を行える状態を目指す」といったように、達成すべき状態と期限を明らかにします。
さらに、期初の段階で、高評価だけでなく、標準評価や低評価になる基準も共有しておきます。
これにより、部下は何を優先し、どの水準を目指せばよいのか判断しやすくなります。
評価面談も、上司が後から主観的に判断する場ではなく、事前に合意した目標に対して、どんな成果が出たのかを確認する場に変わっていきます。
管理職は、優秀な部下ほど多くのことを期待するものです。
しかし、その期待をすべて目標にして押しつけてしまえば、部下の負担ばかりが増えてしまいます。
大切なのは、「たくさんの仕事をさせること」ではなく、「重要な仕事で成果を出せるようにすること」なのです。





