秘密その3 編曲の妙

 この曲には飽きが来ず何度も聴きたくなる理由はアレンジにもあります。

「Progress」は5人組Kokuaで演奏されています。使用楽器は、ドラム、ベース、ギター、ピアノとストリングスです。ロックバンドの基本形の4つの楽器にストリングスという組み合わせは、やり方を間違えれば何とも形容し難く駄目な響きに堕します。そんな例が少なくありません。が、この音盤は、ロックバンドの硬派な響きにストリングスの深みと奥行きが上手く融合しています。

 スガシカオがライブでこの曲を演る時も、弦楽四重奏団を参加させています。それほど、ストリングスはこの曲の不可欠の一部になっていると言えます。

 トリビアですが、ロックとストリングスと言えば、ポール・バックマスターです。例えば、エルトン・ジョン(本コラム第71回)の出世作「僕の歌は君の歌」(写真)のストリンスグス編曲は、隠れていた曲の表情を上手く引き出しています。

 同様に、「Progress」の場合も外見では見え難いこの曲の美しさを決して過度に装飾することなく炙(あぶ)り出しています。この編曲はピアノを弾いている武部聡志です。

 要するに「Progress」は名曲です。

 どうすれば、こんな名曲ができるのでしょうか?

 音楽の神様がある夜、スガシカオの頭に閃きをお授けになられたのでしょうか?

歌詞と旋律の魔法

 2005年の暮れ、NHKは「プロジェクトX」の後継番組として「プロフェッショナル 仕事の流儀」を企画します。そして、テーマ曲をスガシカオに依頼しました。

 依頼を受けたスガシカオは悪戦苦闘します。自分のアルバムをマイペースで創るのとは違います。締め切り厳守です。番組内容を考慮してロックバラード風に創ろうと思うのですが、なかなか納得いかない日々が続きます。