スポーツ用品メーカー国内最大手、アシックスがかつての低迷を脱し、好調だ。ランニング人気や東京五輪の開催決定を追い風に、中期経営計画で連結売上高4000億円以上の目標を掲げ、世界3位のプーマを射程内に捉える快走を見せている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)
東京五輪の開催決定で、沸き立つ国内スポーツ用品メーカー。とりわけ期待を寄せるのは“トップランナー”のアシックスだろう。半世紀前の成功体験があるからだ。
前回の東京五輪では、当時としては破格の予算を投じ、日本人選手のみならず、多くの外国人選手にもシューズを提供。「オニツカ」(現アシックス)を履いた選手が金銀銅を合わせ47個ものメダルを獲得したことが、世界的な知名度を押し上げた。
そのアシックスが現在、売上高で世界4位のスポーツ用品メーカーに位置していることを知る人はそう多くない。
2013年3月期の連結売上高は過去最高の2602億円。今期は売上高で3150億円と前期比21.1%増を、また、純利益も7期ぶりに過去最高となる145億円を見込む。この売上高を上回るのは、米ナイキと独アディダス、そして独プーマの3社だけだ。
好調を支える最大の柱は、世界的なランニングブームを追い風にしたランニングシューズの売り上げ伸長にある。13年4~9月期の連結売上高1537億円のうち、ランニングシューズは787億円と過半を占め、前年同期比で3割近い増加となっている。
背景には、アシックスのランニングシューズが、世界中の「シリアス(熱心な)ランナー」から圧倒的に支持されていることがある。
例えば、世界最大のマラソン大会の一つ、ニューヨークシティマラソン。その11年大会に参加したランナーのうち57%が、アシックス製のシューズだった(アシックス調べ)。アシックスは、高機能かつ高価格の「高級ブランド」としての地位を確固たるものにしているのだ。