さらに日本がCO2削減の費用対効果を最大化するためには、途上国企業によるCO2発生の削減に日本が貢献すべきである。世界のCO2の発生のうち日本は4%で、同じGDPの中国は20%だ。途上国は圧倒的に旧式の石炭火力に頼っているからだ。

 したがって、CO2の排出抑制のために同じ1億円を使うのならば、日本で使うより中国等の途上国に燃焼効率が良い石炭火力の技術援助をするほうが、はるかに効果的だ。

 もし日本の地球温暖化対策の本当の目的が、グローバルなCO2の削減にあるのならば、すなわち国内特定業界への利益供与ではないのならば、日本で金を使うのではなくて、外国で使うべきである。

 日本は今まで原子力産業への利益誘導という目的もあって 、国際的に異常に厳しいCO2の追加削減をコミットしてきた。この目標は取り下げて、炭素税の税率を国際水準に引き上げる工程表を明らかにすべきだ。そして、炭素税導入で得られる税収は、法人税減税の財源に用いるべきだ。

上昇した電力価格に合った
産業構造のシフトこそ課題

「原発が再稼働できないと、安い原発が使えなくなるから、電力価格が上がることが問題だ」と指摘されることが多い。

 原発が再稼働できないと、電力料金はどのくらい上がるのだろうか。原発がない沖縄電力の価格は、原発が稼働していた時の本土より約2割高かった。これが一つの目処だといえよう。

 日本では原発の真のコストを将来世代に先送りにしていたために、原発を安く見せかけてきた。もし、原発の事故コストや使用済み燃料の処分費用を算定し、原発で発電された電力を使用した世代に負担させるように価格付けをすると、日本の大半の原発で発電される電力は、化石燃料発電に電力価格競争で打ち勝てなくなる。

 世界でもまれに地震が集中している日本では、保険コストがきわめて高い。その上、狭い国土で使用済み燃料を処分することが難しいから、処分の為の費用も結果的には高くつくからである。

 安全基準を達成した原発に対しても、相当な保険料と使用済み燃料処分料を課さなければならない。その上で、電力会社が再稼働するかどうかを判断することになる。

 その場合、新設の原発は明らかにペイしない。(八田達夫『電力システム改革をどう進めるか』(日経,2012)第2章第7節参照]