日本はアメリカと同盟を結んでいるのか?

 明治以降、日本が他国と結んだ同盟は、日英同盟と日独(三国)同盟くらいのはずだ。なぜなら同盟とは、「国家目標を達成するために2つ以上の国が軍事上の義務を伴った条約に基づいて提携すること」を意味する。つまり集団的自衛権が前提になる。

 日本とアメリカにおける軍事的な取り決めは、1951年のサンフランシスコ条約で締結された「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(旧日米安保条約)」で始まった。1960年に呼称は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」(Treaty of Mutual Cooperation and Security between theUnited States and Japan)に変わったけれど、条約(Treaty)であることは現在まで一貫している。同盟を意味するAllianceなど、名称のどこにも使われていない。

 戦後、日本を占領したアメリカは、いっさいの軍備の放棄を宣言する日本国憲法の成立にとても強いバイアスを与えた。でも1949年に中華人民共和国が樹立して、さらにこの翌年には朝鮮戦争も始まったことで、アジアの共産化を危惧したアメリカは、日本に対して再軍備せよとの圧力をかけて、自衛隊の前身である警察予備隊(National Police Reserve)が創設される。

 でも、このときから現在まで、憲法九条に抵触する軍(Army)という呼称を、日本は一度も使っていない。もちろんそもそもは、警察予備隊や自衛隊などという呼称が言い換えだ。でも建前が大事なときもある。最後の抑止になることもある。建前としては、日本に軍隊は存在していない。だから他国との(軍事)同盟など、論理的にはありえない。

 少なくとも1981年までは、日米同盟という言葉が公式に使われたことはない。ところがこの年に訪米した鈴木善幸首相とレーガン大統領との共同声明に、「日米両国間の同盟関係」なる言葉が突然現れた。実際の会談では使われていない。帰国後にこれを知った鈴木首相は、閣議で強い不満を表明して、伊東正義外相と外務次官が責任をとって辞任した。かつては「同盟関係」という言葉ですら、これほどに問題になったのだ。

言葉がもたらすもの、変えるもの

 日米同盟なる言葉が再び政治とメディアの表舞台に現れたのは、1996年4月の日米共同声明の頃からだ。オウムによる地下鉄サリン事件の翌年。つまり危機管理意識が一気に高揚したこのときを狙ったかのようにこの言葉が使われて、周辺事態法から米軍再編までが一気に進んでいる。