ベテランのノウハウは、製造業におけるビッグデータだ。人の頭に入っている情報、各種DB(データベース)に格納されている情報、各人のPCに保存されている情報。棚一面に並ぶ莫大な量のキングファイル――。
大手の製造業になれば過去の図面は数十万枚~数千万枚になる。1つの図面に数十の寸法があり、1つの寸法を決めるためには複数のノウハウが必要になる。天文学的な量のノウハウが、製造業には眠っている。まさに「日本の宝」だ。
この技術資産を次の経営や人材育成に活かせるように、整理・分析・加工することを我々は行っている。時にはこの活動を「技術伝承」と呼び、時には「モノづくりビックデータ解析」となる。今どきの言い方をすれば、弊社の担当者はコンサルタントではなく、モノづくりサイエンティストとなるのだろうか。
筆者が薦める「超高速すり合わせ型モノづくり」を実現するための肝は、暗黙知となっているベテラン技術者のノウハウを抜け漏れなく棚卸しし、曖昧な感覚知を定量化することである。
今回はこの肝となる、「ベテラン技術者の暗黙知の棚卸し」「感覚知の形式知化」のための方法論の一端をお伝えしたい。
天文学的な量のノウハウをどう整理する?
棚卸しは分解の粒度と網羅性がポイント
さて、1つ目のポイントは「粒度」だ。棚卸しは、表現を変えると分解だ。分解するときの粗さがノウハウになる。粗すぎると本質が見えない。細かすぎると手間ばかりかかり、全体像が見えにくい。
設計や製品を分解するとき、一般的には機能や部品で実施する方法論が多いが、弊社は諸元で実施する。「諸元」という言葉は、聞きなれない読者もいるかもしれないが、馴染みある表現に置き換えれば「設計パラメータ」だ。
この諸元の単位で可視化するという着眼点が、極めて秀逸だと思う。これは弊社のプロフェッショナル・コンサルタントの大泉が発見した。彼の功績に感謝したい。