法人営業にもNTTコムが居る。NTTコムは、データセンターや通信ネットワークに強みがあり、今はグローバルでクラウドサービスを展開、特に法人に強い。そのため、NTTコムが法人の窓口となれば、NTT東西の営業部隊は必要なくなる。

 その一方でドコモは、国内個人向けのモバイル事業が主で、光回線のように世帯ごとの契約ではなく個々人と契約しているため、より個人に強い。約2400店舗のドコモショップや大規模コールセンターを有することから、個人向けの窓口として、NTT東西の顧客対応を担わせる算段もできる。

 すでに、NTTグループの料金請求はNTTファイナンスにより一体化されている。従って、支払いの不便もない。

 つまり、法人対応はNTTコム、個人対応はドコモとすれば、NTT東西に残された機能は、電話回線や光回線のインフラ維持のみ。単なる設備会社となり、実質的な“解体”につながるわけだ。そうなれば、販売代理店手数料や人件費のコストカットにもつながる。

 また、NTTは成長戦略として、17年3月期に200億ドル(約2兆円)以上を海外で稼ぐ方針だ。そこで、NTTコムを事業の中心に据えることで、注力している北米市場を対象にしたクラウドサービスの展開にも弾みがつく。

 実際、今回の人事異動は、そうした意向が色濃く出ている。

 NTTコムの澤田純副社長が、持ち株会社の副社長に就任。グループ中枢に招くことは、NTTコムの位置付けを重要視していることを意味する。さらに、海外動向に精通し、鵜浦博夫・NTT社長の“政策秘書”である、栗山浩樹氏が持ち株の取締役になることも同義だ。

 一方、これまで独立心が強く、持ち株のコントロールが効きにくかったドコモへの支配力も強めている。

 持ち株の財務担当役員である坂井義清取締役がドコモ副社長に就き、持ち株出身の阿佐美弘恭・ドコモ常務が経営企画部長を担うことになるからだ。さらに、ドコモ副社長には、大物の元総務審議官の寺崎明氏が就任し、規制論議に影響力を発揮できる体制だ。

 規制緩和の議論は、ステークホルダーが多いだけに長期間を要し、政治的なリスクもはらむ。グーグルやフェイスブックなどにより競争環境が大きく変化する中、NTTの打ち出した一手は、そうした不安要素を回避しながら競争力をつけようとするもの。社内外から大きな反発も予想されるが、転換への強い意思の表れだといえる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)