ここ数年の日本経済は、円安によって大きな影響を受けた。円安によって利益を受けた部門と、被害を受けた部門は、はっきりと分かれている。
輸入物価の上昇によって消費者物価が上昇したため、家計の実質収入が減り、実質消費が減った。他方で、企業の利益は増大した。ただし、企業利益の動向は、産業別、規模別に大きな差がある。
物価上昇で
実質消費が減少している
2013年に比べて最近の経済活動水準が落ち込んでいるのは、一時的要因(公共事業の増加と消費税増税前の駆け込み需要)の剥落によると前回述べた。ただし、消費支出については、それ以外の要因が働いている。
このことは、過去の消費税増税時と今回を比べると、よく分かる。図表1は、実質消費の推移を示したものである。1989年の消費税導入時には、ごく一時的な影響しかなく、11月には増加に転じた。また、97年の増税時にも、数ヵ月でほぼ元の水準に戻った。
しかし、今回は、9月になっても水準が下がったままだ。これは、89、97年当時にはなかった要因が働いていることを示している。
考えられるのは、物価上昇による実質所得の減少だ。
図表2は、総合と食料についての実質消費指数の推移である。いずれも3月に大きく増加して4月に減少、その後回復という点では同じだ。総合の回復が遅れているのは、総合には耐久消費財に対する駆け込み需要の影響が含まれているのに対して、食料には駆け込み需要がほとんどないからであろう。