半世紀にわたり栄華を極めた永守帝国が、軋みを上げて崩れ始めた。 強権的なトップダウン、果敢なM&A(合併・買収)、そして驚異的な高成長――。「永守マジック」と称された異形の経営モデルは、完全に機能不全に陥っている。“ムラ社会的な意思決定”や実態と乖離した“ハリボテ経営”の危うさは早くから兆していたが、好業績と高株価がそれらの暗部を覆い隠し、財界や投資家は永守重信氏を「停滞する日本産業界の救世主」と持ち上げ続けてきた。では、なぜこの異様なマネジメントは膨張を続け、ついには企業を崩壊寸前に追い込む構造的矛盾を抱えるに至ったのか。ニデックが直面しているのは、不適切会計という単発の不祥事ではない。永守氏というカリスマが築いた日本的経営モデルそのもののが破綻し、ニデックはいま最終審判の時を迎えている。