もう1つ、今度は購入派寄りの補足だが、わが国の場合、不動産を通じた相続は、現金などの金融資産による相続よりも、相続税の上で有利になることが多い。不動産には、いわば「相続の通貨」と言える側面がある。こうした要素を、原則の損得計算の中にいれなければならないケースもある。

「家賃がもったいない」
購入派の「理由」に心配あり

 さて、基本的な判断方法は上記の通りであるとしても、人には好みや価値観があるし、誤解する場合もある。住宅の「購入」を良しと考える人々の「理由」を見てみよう。

 断然のトップに来たのは、「家賃がもったいない」だった。「買う方がよい」と答えた人の60%近くが、この理由を答えている(注:複数回答あり)。この理解はいささか心配だ。

 不動産の価格が適価である場合、ある時期の家賃の支払いの経済価値と、その期間に不動産に資金を固定してかつその物件のリスクを負うことの価値は、ちょうど見合っているはずであって、「賃貸はお金が出て行くばかりだから損なのだ」という理解は不適切だ。

 しかし不動産業者には、この点を正確に理解していない客が相当数来るので、彼らが購入に向けて顧客の背中を押す場合、たとえば「賃貸で住むと、いくら家賃を払っても家は自分のものになりません。購入すると、ローンが終われば(この物件は)あなたのものになります。自分のものにならないものへの支払いと、自分のものになるものへの支払いと、あなたはどちらが好きですか……?」といった言辞を弄する。

 そもそも、家の適正価格の計算ができないまま、「買えたら買った方が得なのだ」と信じて、自分に買えるか、買えないかだけで不動産購入の可否を考える人がいるとすると、高値で買ってしまいそうで心配だ(不動産業者から見ると、こういう客こそが「狙い目」なのだが)。

 特に現在の低金利下で、かつ変動金利で住宅ローンを利用して、「なんとか買える」ということを判断根拠に不動産を買うのだとすると、何とも危ない。

 購入派の2番目、3番目の理由には、うなずける点とそうでない点がある。2番目に多かった理由は「老後の安心のため」、3番目の方は「家は資産になるから」だ。