持ち家がいいか、賃貸がいいかは、「永遠のテーマ」なのだそうだ。住宅雑誌でも、一般誌でも、繰り返し取り上げられる。ちなみに、筆者は、この種の企画で、「賃貸派」として取材されることが多い。
確かに、筆者は、就職してからでも12回の引っ越しを経験しているし、ずっと賃貸住宅暮らしだ。背景は二つある。一つには過去の(特にバブル期の)明らかに高過ぎる住宅価格で家を買うほど筆者が愚かではなかったことだが、もう一つは、筆者が採算を度外視して自分の家を買えるほどのお金持ちではなかったことだ。
では、一般的な損得計算としてはどう考えるべきなのか。
不動産をキャッシュで買う場合と、ローンを組んで買う場合を区別して考えよう。
キャッシュで買うとき、買うか・買わないかの判断は、投資物件としての不動産の価格による。不動産に期待できる収入と、リスクを考慮した上での不動産価格が「投資として」損か得かが問題だ。
自分がその家に住む場合と、不動産物件を賃貸に回す場合とは、前者が「自分が店子である不動産への投資」だと考えると大きな違いはない。期待される「家賃マイナス経費」をリターンと考えて、これが、空室リスク、地価変動リスク、災害等のリスクなどもろもろのリスクを考えても十分であるかが判断の分かれ目だ。
この判断にあっては、不動産のリスクに対して、どれだけの追加的なリターンがあればいいかが問題になる。マクロ的な地価変動のリスクは、感覚的に言って、平均株価のリスク(年率標準偏差で20%程度)よりも小さいが、為替レートの変動リスク(ドル円で10%程度)よりも大きいというくらいのリスクではないか。
加えて個別の不動産物件の場合、立地や建物の個別のリスクを負担しなければならない。売却・換金したいと思ったときに買い手が見つかるとは限らない流動性と、売買コスト(不動産仲介手数料と税金)のマイナスの影響も評価に織り込まねばならない。