尖閣への抑止力向上は
横田配備の理由にならない

 現在、米空軍は沖縄の嘉手納空軍基地に特殊部隊を輸送し、夜間に落下傘降下をさせるMC130H中型輸送機(4発ターボプロップ)と、その空中給油機型MC130P計約10機を持つ「353特殊作戦群」を配備し、隣接するトリイ通信所には陸軍の「第1特殊部隊群」の第1大隊(約300人)が駐屯、この両者が一体となって潜入作戦を行う態勢だ。

 このため米空軍がCV22の調達を始めた時点から、その一部が嘉手納に配備されることが予想されていた。米空軍も当初はその計画だったようだが、それを横田配備に変更した理由としては、

 ①普天間へのMV22配備への地元の反感が激しかったため、嘉手納でも反対が起こり、基地全体の撤去を求める動きも起きかねない。

 ②海兵隊普天間飛行場の閉鎖が1996年4月に日米間で合意された際、日本政府は嘉手納基地への統合を求めたが、米空軍は少女暴行事件などで評判の悪い海兵隊との同居を嫌がり、「低速の回転翼機(ヘリコプター)と空軍の高速の戦闘機を同じ基地に置くと航空管制が困難。危険が大きい」と主張して拒否した。CV22を嘉手納に配備すればこの論理が崩れ、「辺野古の新基地建設よりは早期実現が可能で、経費も格段に安い嘉手納統合でよいではないか」との論に強い根拠となる。

 ③CV22は敵の対空レーダーに発見されにくく、対空ミサイルや、高射火器で狙いにくいよう、山の陰に隠れ、谷間を縫って超低空で目標に接近するが、沖縄はほぼ平坦で周囲は海だから、その種の訓練には適さない。海兵隊のMV22も、特殊部隊専用のCV22ほどではなくても、その訓練をするため岩国基地に来て、日本本土で行っている。横田にCV22が常駐すれば、たぶん長野県から新潟県にかけ、日本アルプス付近を通る飛行訓練経路「ブルー・ルート」を使用できる、などが考えられる。

 横田にCV22が配備されると、尖閣諸島などでの抑止力向上になる、と日本政府は説明するが、横田から尖閣へは約1800kmもの距離があり、空中給油をしないと届かない(新聞ではオスプレイの航続距離を3900kmとする記事が多いが、これは貨物室の座席を取り払い、燃料タンクを増設した長距離移動用の場合だ。実用ではエンジンを斜め上に向け、滑走して離陸する場合でも1700kmが限度)。中国に対する抑止力、というなら尖閣から350kmの嘉手納に配備するはずだ。