失敗から学んだ「ビジネスの本質」
僕は、2015年3月31日をもって、LINE株式会社の社長の座を後進に引き継ぎました。
日本テレビ放送網、ソニーを経て、LINE株式会社の前身となるハンゲーム・ジャパン株式会社に入社したのは2003年。当時は、社員約30人の赤字会社。36歳にして平社員、年収も半減する転職でしたが、創設して約3年と“若い会社”であるハンゲーム・ジャパン株式会社には、大企業につきまとう社内のしがらみもなく、「いま世の中が求めているもの」や「新しいもの」を自由に追求できるのではないか、と考えたのです。資金力もブランド力もなく、あるのは「情熱」と「知恵」だけ。仲間とともにがむしゃらに働いたことを懐かしく思い出します。
あれから12年が過ぎました。
この間、数多くの失敗をしてきました。
努めて楽天的に振る舞ってきましたが、正直なところ、不安で眠れない夜もありました。思い通りにいかず、部下とともに声を出して泣いたこともあります。
しかし、失敗から実に多くのことを学ぶことができました。いえ、「なぜ失敗したのか?」を徹底的に考えたからこそ、ビジネスの「本質」に近づくことができたのだと思います。そして、あきらめることなく一歩ずつ歩み続けた結果、ここまでたどり着くことができました。この12年間の経験は、僕の一生の財産です。
そこで、社長退任を機に、これまでの人生で経験したこと、学んだこと、考えたことを、ひとりでも多くのビジネスパーソンとシェアしたいと考えて『シンプルに考える』を書きました。いい仕事をして、ビジネスで成功するために、何が最も大切なのかを、僕なりにシンプルに考え、実行してきたことの記録でもあります。将来に不安を感じている若い方々から、会社の行く末を案ずる経営者の方々まで、何かしら参考にしていただけることがあるのではないかと考えた次第です。
もちろん、まだまだ若輩者です。ご意見もお寄せいただけると幸いです。多くの皆様と本質的な議論を深めることによって、世界経済の発展に少しでも貢献できれば望外の喜びです。