「トリチウム」はなぜ怖いか
坪井 今日、まずお聞きしたいのは、フクシマ原発から出た放射性物質トリチウム(三重水素)についてです。
本連載第4回「フクシマ原発からの放射能漏洩はトテツモナイ量に!全く報道されない『トリチウム』の危険性」が8月2日(日)だけで45万ページビュー(サイトの閲覧数)を記録したそうです。すごい数字です。
広瀬 読者の感度が相当鋭く、またテレビと新聞がいかに重大なことを伝えていないかということでしょう。トリチウムの問題は、日本のマスメディアでほとんど触れられていない危険性なので書きました。
実は、「トリチウム問題」は現在、日本中の原発から使用済み核燃料を集めてきた青森県の六ヶ所村で最大の問題となっています。
六ヶ所再処理工場では、2006~2008年におこなわれた試験的な再処理(アクティブ試験)で、海洋放出廃液のトリチウムの最高濃度が、実に「1億7000万ベクレル/リットル」だったのです。これは、フクシマ原発事故現場のトリチウム放出規制値である「1500ベクレル/リットル以下」の11万倍ですよ。
だから下流域の岩手県三陸海岸近くの住民は、「総量規制をしろ。規制できない再処理を断念しろ」と要求しているのです。このトリチウムが、千葉県まで流れてきます。
原子力規制委員会委員の田中俊一委員長と田中知(さとる)委員は「トリチウムを海に流してしまえ」という趣旨のことを言っていますが、トンデモナイことです。
坪井 トリチウムは、水素が中性子を捕えて「トリチウム水」として存在するんですよね。崩壊してヘリウムになるときに放射線(ベータ線)を出します。フクシマ原発を起源とするトリチウムはどのくらいの量になるのでしょうか。
広瀬 フクシマ原発から出たトリチウムの放出総量はまったく明らかにされていません。しかし、汚染水タンクに大量に入っているのは確かです。
特に深刻なのは、福島第一原発4号機の燃料プールです。東京電力は積極的に情報開示すべきですが、こちらについても、まだまったく分らないことだらけで、東電の発表は信用できません。