「もし再婚や養子縁組の事実を知られなければ、来月以降も養育費を満額、もらえたはず。それなら彼とは離婚するし、陸斗、莉子とは離縁させるわ!」

 前妻はそんなふうに今さらタラレバ論に話をすり替えようとしてきたそうです。確かにどこの誰と再婚するか、養子縁組するか、そして父親の役割を任せるのかはあくまで個人の自由であり、前もって和彦さんの承諾を得る必要はありません。

 とはいえ今さら再婚相手と離婚すれば、ますます戸籍は汚れるし、2回目も離婚したら世間体が悪すぎます。また子どもと離縁すると住み慣れた家、使い慣れた部屋、そして通い慣れた学校を変えざるを得なくなる可能性があり、そもそも「前夫からの養育費を減らされたくない」という理由だけで戸籍をころころ変えるのは現実的ではありません。

 このように後ろ向きな話をしても仕方がないので、感情論は抜きにして、あくまで今現在の経済状況、家族構成だけに焦点を当てることが大事です。和彦さんは「前向きな話をするしかないでしょう」と訴えかけたのです。

離婚から8年、面会ゼロ
怒りのあまり震えた手

「ここまで薄情な奴だとは思わなかったわ!だったらもう陸斗、莉子には会わせないからね!!」

 前妻はそんなふうに逆上してきたそうですが、まるで子どもを人質にとるような振る舞いを目の当たりにして和彦さんは怒りのあまり手に震えが止まらなかったそうです。陸斗くん、莉子ちゃんにとって和彦さんの存在は血縁上、唯一の父親であり、同じように和彦さんにとっては唯一の子どもであるのは確かです。もちろん、法律的にも面接交渉権(子どもに会う権利)が認められているし、和彦さんは、会いたいと思っていたそうです。子どもの成長は個人的にも興味関心を持つのは自然なことで、淡々と養育費を払うだけでなく、何らかの見返り(面会)を欲するのは当然といえば当然でしょう。

 しかし、前妻の話を聞けば聞くほど、和彦さんは自分の存在が「子どもにとってどの程度のものなのか」を考えざるを得ませんでした。それもそのはずです。和彦さんは離婚から8年間も子どもと直接会っておらず、お金以外の面では父親としての役割を果たせずにいたのです。