数ヵ月前に、浅草のあるマンションの一室のドアを叩いた。そこにオフィスを構えているネットショッピング会社を訪問するためだ。

 室内に入ると、普通の3LDKの住宅をオフィスにしていることがすぐにわかった。がらんとした室内の窓際に数人が座って作業している。壁の一角に中国系のネットで売れ筋と言われる商品が無造作に置いてある。応接室も安物の机と椅子とホワイトボードだけが置いてある。1995年、私が事務所を立ち上げたときの光景を彷彿させた。

 その会社の名はbolomeだ。中国語では波羅蜜となる。明らかにその発音を念頭にして考案した中国語社名だ。代表者の陳少春氏は在日中国人社会で知られていた「小春論壇」というサイトを作った創設者で、Ctrip(携程網)ホテル事業部の日本法人元代表も務めていた。社員数は20名ほど。

動画配信アプリを使って
化粧品が日本と同じ値段で買える

 波羅蜜とはパラミツのことを言う。「ジャックフルーツ(Jackfruit)」とも呼ばれる。インド原産の常緑高木で、果実は40kgにもなる巨大なものだ。熱帯地域でよく栽培されている。東南アジア諸国を訪れると、仏教寺院に植えられているパラミツの巨大な果実が幹からぶら下がっている光景を目にする機会がよくある。この会社はこの熱帯フルーツの名前を社名にした。

 食べ物を社名やサイト名にすることは中国ネットビジネス分野ではよく見られる現象の一つだ。その一例は動画専門の「土豆網」(ジャガイモ・ネット)だ。