たとえば、こんなエピソードがあります。

 大きなプロジェクトのリーダーに抜擢され、素晴らしい業績を残したA本部長が人事異動により他部門へ異動になった時のことです。A本部長の上司が、私の上司であるB役員でした。

 見事な業績に対して敬意を表し、感謝の気持ちを伝えたいB役員は、A本部長との別れを悲しく思いながらも、A本部長に「有終の美」を飾ってもらいたいという気持ちから、プロジェクトメンバー数名に「最高のRecognitionパーティを開催したい」という提案をしました。

 もちろん、A本部長には内緒です。

 そのプロジェクトは、40名程度のメンバーで構成されていました。提案を快諾したメンバーが企画を考え、一人ひとりが、1~2分程度、これまでの3年間の感謝の気持ちを伝えるムービーをつくりました。そして、パーティ当日に上映したのです。

 A本部長の奥様も同じ会社に勤めていらっしゃったので、無理をお願いして、奥様からの一言も最後に添えました。

 普段は強気なA本部長でしたが、ムービーを見ている時だけは、顔をくしゃくしゃにしながら涙をぬぐっていました。

 共に仕事をしてきた仲間全員から、一度に「ありがとう」と言われ、「こんなにみんなに喜んでもらえて、プロジェクトリーダーとしてこのプロジェクトに参画できて本当によかった」と心から思える感激の瞬間です。今までの苦労が、一気に吹き飛んでしまったことでしょう。

 嬉しさと寂しさの交差する、涙あふれる会となりました。

 今後は、たとえ部門が変わったとしても、「プロジェクトリーダーのAさん」ではなく、「一緒に仕事をした信頼のおけるAさん」として、一人ひとりの心の中にAさんとの思い出は鮮明に残り、プロジェクトが終っても、その関係性は続いていくはずです。