当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主が相当な期間を定めた上で、その期間内に借用を全額返済するよう督促した場合、法律的には「督促日を返済日(支払期日)と看做すことができる」という規定があるので(民法591条)、督促の結果、今だに全額返済されていない場合、すでに支払期日が到来しており、現時点で借用は延滞状態に陥っていることになります。

 今回の場合はどうでしょうか?12月20日(金銭授受の当日)の段階では具体的な返済期日を約束しませんでした。しかし、12月27日、妻は男に対してLINEで「私です。金銭の件ですが全額返してもらえませんか?」と送っており、既読マークが付いたのだから、男はこの内容を読んだのでしょう。このことから12月27日を返済期日と看做すことができるので、すでに滞納状態に陥っており、全額を返すよう請求しても問題ないのです。

「とにかく一括で返してほしい。アンタとだらだらと付き合うなんでゴメンだ。分割なんて許さない!」

結婚詐欺に遭った妻は
被害者なのか

 最後に広樹さんは分割ではなく一括での返済を求めたのですが、それもそのはず。広樹さんの通帳には、「フジタトモアキ フリコミ 1,000,000円」という、ただでさえ見たくもない文字が印字されてしまったのに、もし分割で返済することになれば、毎月のように「フジタトモアキ」という文字を目に入れざるを得なくなり、また期日に返済されなければ督促をしなければなりません。いずれにしても詐欺師との接点が残るようでは、根本的に解決したとはいえないでしょう。

 もちろん、男に100万円を一括で弁済できるほどの収入や資力があるかどうか、広樹さんも確信があるわけではありませんでした。しかし、直談判の日から1週間後、広樹さんの口座に100万円が戻ってきたのです。

 男が不妊治療を受けずに、まだ100万円が手元に残っていたのか、それとも遊興費として使い込んだのか、今となっては定かではありません。また男が身銭を切ったのか、両親や勤務先、銀行やカード会社等からの借入等の方法により用立てたのかも不明ですが、一応は裁判沙汰にせず、示談で解決できたのは不幸中の幸いといえるかもしれません。