景気が上向きなのに対して、依然として長期失業率が高いのはなぜか

 安倍政権が推し進めるアベノミクスの効果で、有効求人倍率が約24年ぶりの高水準となり、日本の雇用情勢は良くなったと言われている。しかし、増加しているのは非正規社員ばかりで、依然として正社員の雇用は増えていないという指摘がある。「欲しい人材がなかなか見つからない」と嘆く企業の採用担当者も少なくない。実際、採用・就職の現場の実態はどうなっているのか。

 世界33ヵ国で人材サービスを提供する英国ヘイズの日本法人、ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパン株式会社(以下ヘイズ・ジャパン)が昨年11月に発表した『ヘイズ・グローバル・スキル・インデックス2015年 世界31ヵ国労働需給効率調査』の中に、その実態をうかがい知ることができる興味深いデータがあるので、ご紹介しよう。

 同調査は、同社と英オックスフォードエコノミクスが共同で、世界31ヵ国の労働市場における人材の需要と供給のバランスがよいか悪いかを、7つの指標(教育の柔軟性、労働市場への参加、労働市場の柔軟性、人材ミスマッチ、全体的な賃金圧力、ハイスキル業界における賃金圧力、ハイスキル職業における賃金圧力)を基に評価・分析し、それぞれ0~10のスコアを施したもの。スコアが5.0を下回るほど人材確保が容易、逆に5.0を上回るほど人材確保が困難な状態を表す。日本は前述の7指標のスコアを平均した「総合スコア」で6.1となっている。31ヵ国中7番目の水準で、人材確保が困難な国であることが推察される。

日本はアジア・太平洋地域で
最も人材が探しにくい国

 こうした状況の背景には、何があるのか。最大の課題は前述の7指標のうちの1つ、「人材ミスマッチ」の高さである。日本は、2年連続で人材の需要と供給のミスマッチが悪化しており、2015年の同調査では最高値である10.0を記録したという。これは、中国の4.9、インドの5.0、シンガポールの6.0などと比べて圧倒的に高い水準であり、日本はアジア・太平洋地域で最も「人材が探しにくい国」という結果になった。先進国と比べて労働市場の整備が進んでいないように見える中国よりも、人材ミスマッチが2倍も高いのだ。この結果に驚いた読者は少なくないだろう。日本ではなぜ、これほどまでに人材ミスマッチが高いのか。ヘイズ・ジャパンビジネスディレクターの高井健氏に話を聞きながら、分析してみよう。