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 今回登場する天才は、アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスである。ベゾスは1994年にインターネット書店のアマゾン・ドット・コムを立ち上げた。推奨機能や翌日配送などを強みに事業を拡大し、現在は売上高が7兆円を超えるまでに至っている。本や音楽に留まらず、家電や雑貨などにも品揃えを広げ、リアルな店舗に大きな脅威を与える存在となっている。

 それでは、ベゾスが世の中に与えたインパクトについて理解するために、ここでまたエクササイズに取り組んでもらうことにしよう。

【エクササイズ1】
Q:ベゾスの登場によって、世の中がどう変わったのか考えてみてください。
ベゾスが消費者の生活に及ぼした影響とはどのようなものでしょうか?

 ベゾスは本屋の概念を根底から変えた。かつては電車に乗って繁華街の大手の書店に足を運んでいたが、今はキンドルのスイッチを入れればそこに書店が現れ、その場で本を手に入れることができる。以前は本屋の棚を眺めながら読みたい本を探し、そこになければ諦めていたが、今はアマゾンで探したい本のキーワードを入れるだけで、それに関連する膨大な量の本を探してきて並べてくれる。

 また、自分が関心を持ちそうな本を薦めてくれたり、様々な人が書いた書評を読むこともできる。電子書籍「キンドル」のおかげで、自宅に書棚を買ったり、古本を売りに行ったり、紐で縛って廃品回収に出す必要もなくなった。本だけでなく、音楽、映画、家電、おもちゃ、家庭用品など、アマゾンにアクセスすれば何でも買えるようになった。スティーブ・ジョブズがコンピュータや電話を「再発明」したといわれるように、ベゾスは書店や小売店を再発明したといっていいだろう。

小売業では素人ゆえに
常識破りの自由な発想が可能に

前回、エンジニアではない“素人”のスティーブ・ジョブズが、並み居るエレクトロニクスメーカーのエンジニアたちを出し抜いて、クラウドサービス型のビジネスモデルを最初に確立したことについて述べた。こうした意味では、ベゾスも“素人”といえる。彼はアマゾン・ドット・コムを立ち上げるまで、伝統的な小売業で働いた経験はない。

 ベゾスは大学卒業後、ウォールストリートの金融機関を経てヘッジファンド、D.E.Shaw&Co.に入社し、シニア・ヴァイス・プレジデントまで昇進した。しかし、1994年春に インターネットのポテンシャルに気づき、同社を退職、電子書店を立ち上げた。小売業の領域においては、文字通り“素人”だったのだ。