他のBRICs諸国と異なり
インドが高成長を続けられる理由

 一般に、成長途上国は第1次・2次産業を基盤として成長する。インドは“BRICs”(著しい成長が期待される4ヵ国、ブラジル・ロシア・インド・中国の略称)の1つに数えられているが、インドを除く他のBRICs3国も例に漏れない。ブラジルとロシアは資源輸出、中国は低賃金の労働力を提供することで、大きな経済的発展を遂げた。

 しかし、インドの事情は少し異なる。インドは第3次、つまりサービス産業を中心に成長を続けているからだ。

「インドでは、金融や不動産などのサービス産業がGDPの6割近くを占めていて、なかでもソフトフェアの委託開発など、IT産業の成長速度には目をみはるものがあります。これは途上国のなかでもきわめて特異なケースといえます」(伊藤氏)

 産業構造は、“成長の持続性”にも大きく関与している。例えばBRICsのうち、ロシアとブラジルのような資源輸出に依存する国では、世界景気の影響がそのまま経済情勢に反映されやすい。実際にロシアでは、原油価格の下落に伴ってルーブルが最安値を更新した。また、ブラジルでは鉄鉱石価格の下落にともない、レアルの価値も落ち込んでいる。中国も「世界の工場」としてGDPは向上したが、それに伴って人件費も上昇し、成長は鈍化しつつある。

 しかし、インド経済の特異さは、内需主導型という点にある。GDPは1人当たり1617ドルと、数字のうえでは中国の5分の1程度にとどまっているものの、その5割は、民間消費によって形成されたものだ。それこそがBRICsのなかでも唯一コンスタントに成長を続ける原動力となっている。インドの実質GDPは、2016年度も緩やかに加速すると見込まれており、今後10年間の潜在的な平均成長率が10%を越えると見積もる識者もいるほどだ。

 インド人はもともと「ゼロの発見」で知られるように、数字の扱いに秀でた国民として知られる。さらに準公用語が英語というのも、グローバルビジネスにおいて非常に有利に働いている。1947年の独立当初より産業らしい産業がなかったインドが、国家戦略として“頭脳立国”を目指したことは考えるに難くない。インドでIT産業が開花したことは必然の結果と言えるだろう。