経営×ソーシャル

質から量、また質の時代に
選ばれる「ネットワーク」の5つの条件

 これは、これからのネットワークにも応用できます。囲うものと囲われるものの間に、にじり口のような、フィルターの役目を果たす何らかの技術が必要になってくると思われるといいでしょう。通常だとメンバーシップだと考えられますが、もっと行ったり来たりできたり、入口にいたくなったりするものがあってもいい。日本にはもともと、縁側や縁台、長屋、大屋根など、内と外が厳密に決まっていない不思議な空間がありました。軒や庇もそうですね。これは日本的な境界、際、縁というコンセプトだといえます。宮本武蔵はその「際」がどうできるかということを『五輪書』で書いている。そしてそれを「瀬戸」と呼んでいます。瀬戸を渡ろうとしているのか、止まろうとしているのか、もしくはこっちから行った方がいいのか。あちらとこちらの間(あわい)にこそ、武道の本質があると宮本武蔵は気づくんですね。

 同様に、21世紀のネットワーク社会においても、瀬戸が重要なポイントになります。消費者コミュニティで言えば、企業は顧客を外部者だと見ているわけですが、そんなことはない。その人達がいなければ、その会社は成り立たない。企業にとってどのような「瀬戸」を置くべきかということを考えることが、今後とても大事になってくるでしょう。

「ないもの」を考えるとき、人は創造的になる

「私たちは欠如から、クリエイティブなクオリティを生み出し、創発を起こす」(松岡氏)

 4つ目は「3つのA」をテーマにするといいでしょう。3つのAとは、「アテンション」「アトリビューション」「アソシエーション」の頭文字のことです。アテンションは、人々が注意のカーソルを向けるということ。アトリビューションは、帰属制や属性をどう感じさせるかということ。アソシエーションは、人々がつながっていくという意味であると同時に、「連想する」という意味もあります。アテンションをもって、アトリビュートをつくりながら、アソシエートしていく、というのが「Quality of Network」においては必要になってくると思います。

 最後に、5つ目は「エマージング」です。つまり、「創発」ですね。物質現象は水が氷になったり水蒸気になったりするように、液体が個体になる、液体が気体になるなど、状態のフェーズを変えます。これを「相転移」といいますが、この時に起こっているのがエマージングプロセスです。この現象は非常に創造的なことです。コミュニティのネットワークの中でも、臨界値を超えて、相転移を起こし、まったく新しいものが生まれるというプロセスが想定されるでしょう。

 編集工学でも、それに近いことを考えてきました。人々はどんなときに創発的になるのか。その一つが、「ないものを考える」ときだと思います。例えばこの会場となっているホールにいると、何が見えるでしょうか。ライト、スクリーン、マイク、椅子、消火装置……通常は、そこにあるもののことしか考えません。しかし、ないものはなにか、と考えたとき発想は無限に広がります。ゴジラもいないし、ジャングルのような植物もない。ブレイクダンスもないし、パンクロックもない。私たちは欠如から、クリエイティブなクオリティを生み出し、創発を起こすことが多いのです。

 是非とも、これら5つのテーマをもとに「Quality of Network」、ネットワークにおける質について考えていくといいのではないかと思います。

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