財務大臣としては、ちゃんとそこを踏まえて贅沢は言っていないつもりでしたが、おそらく傍から見ると「その予算で?その条件!?」という贅沢だったのでしょう。まずもって500坪そこそこの物件が存在せず、「300坪以上」を条件としても登録物件がないのです。あったとしても「1300平米 1億6000万円」などという豪邸物件。

 はじめは「小田急線沿線がいいかな!」「東海道線や中央線だと乗り継ぎ悪い?」などと無邪気に話していましたが、一日に何十回も「該当物件がゼロ件ありました」という検索結果を目の当たりにし、都心から一本で行ける路線周辺の500坪以上の格安田舎暮らし物件など、ネット上に存在するわけがないという現実をあっさり知ることとなりました。

 そして、東京からどんどん離れてみても坪10万円をそれほど下回らない。狭いし高いし、どうしようもありません。この現実と、どう折り合いをつけるかです。

 毎日ネットで検索していると、それなりに知恵がつきます。試行錯誤のうちに、ネット上では「仲介土地」よりも、「一戸建て 中古」というカテゴリーの中に手応えのある物件が潜んでいることや、田畑や雑種地といった物件が豊潤なサイトを見るとイメージと近しいものが見られることや、自分が入力する条件を勘所よく緩めるコツなどを次第に覚えていき、「該当物件がゼロ件ありました」という文字列から逃れられるようになりました。

 日本狭しといえども、目にとまっていないだけで今この瞬間もどこかに眠っている土地は必ずあるはずだという確信を胸に、こちらの出方を変えてみたのです。

 さらに進化したわたしは、「ウェブ上にのっていない出物」を探そうという方針をうち立てました。つまり、なんとなく、地場の地主とつながりがありそうな不動産屋さんを(物件のラインナップから)嗅ぎ分けて直接連絡をし、まだ出回っていない情報を回してもらおうという戦略です。適当な土地を選んで現地見学を希望しつつ、問い合わせフォームにこんな文章をくっつけて、送るのです。

「セカンドハウスを建てる土地を探しています。家庭菜園に適していて、平坦地500坪以上、日当たり・眺望がよい閑静な高台の土地が望ましいです。第三京浜あるいは東名高速の入口から一時間半以内で行ける場所がありましたら、お知らせください」

 これが功を奏して、翌日には何通ものメールが届きました。いろいろな物件の添付ファイル付きのため、それぞれの不動産屋さんの得意が分かります。

 500坪以上と希望しておいても「駅近、病院にも近い優良物件です。120坪」という一般物件を紹介されたり、「600坪 900万円 調整区域」という家の建てられない物件を示されたり、「1000坪 1980万円 道路づけがなく、敷地の過半は北斜面、有効面積45坪ですが」というのもあり、なぜオススメしてくるのだろうと素朴に疑問に思いつつも、やはりネットには出さない”出物”がいろいろあるぞと手応えを感じました。

 同時に、いよいよ不動産屋さんと相対して「土地を訪れる」というフェーズに移行するんだという緊張感もにわかに湧いてきて、いくら決意しても妄想の域を出なかった土地探しが一気に現実味を帯びてきました。

(第7回に続く)