携帯電話の位置情報機能を活用したサービスが進化している。NTTドコモは全地球測位システム(GPS)から得られたユーザーの位置情報を分析して、ユーザーがよく行く場所やよく通る経路を推定する機能を開発した。これが実用化されると、ユーザーがこれから向かうと予想される場所の情報をユーザーの携帯電話に配信することで、広告宣伝やマーケティングなどに活用できるようになる。

 この機能は「リアル行動ターゲティング情報配信」といい、ユーザーごとの行動パターンの分析を、曜日や時間帯ごとに実施して、ユーザーの現在位置と進行方向によって、これから向かう場所を推定するもの。

 たとえば、平日、昼休みにユーザーが会社の外に出たら、これからランチだと予測し、近くのレストランの新メニューの情報を配信するといったことが可能になる。また、休日、日用品や食材をまとめ買いする主婦に、よく利用するスーパーの安売りの情報を提供するなど、曜日ごとの行動を分析予測して情報を提供できるところに特徴がある。

 これまでも同社はGPSを利用したサービスを提供してきた。3月には、GPSを活用したターゲティング情報配信「次ナビ」の提供を開始している。これは企業向けのサービスで、現在位置に連動して、推奨スポット情報や周辺地図情報の提供などを、企業が顧客に提供することが可能になる。

 こちらは企業向けで、ユーザーの行動を分析しない点が先の「リアル行動ターゲティング情報配信」とは異なるが、ドコモがサービス提供に必要なプラットフォームを構築するので、企業側で専用のシステムを構築する必要がなく、手軽に導入できるのが魅力だ。

 「携帯電話はユーザーが常に持ち運ぶものですから、位置情報に連動させたサービスを提供することは理にかなっていると思います」と、NTTドコモ。

 同社は、今後もGPSを活用したさまざまなサービスを提供していきたいという。「リアル行動ターゲティング情報配信」が実用化されるのはまだ先だが、現在好評を博している「iコンシェル」にGPSを活用したサービスを付加することを検討しているという。

 ちなみに「iコンシェル」とは、ユーザーのライフスタイルや居住地のエリアに合わせて、毎日の生活に役立つ情報を待受画面上のキャラクターが知らせるサービスだ。ユーザーは鉄道運行状況や災害情報、イベント情報などが得られる。2008年11月にサービスを開始し、人気を集めている。ここにGPSを活用した機能を付加してサービス内容を充実させようというのが狙いだ。

 今後、顧客の購買意欲を増すには、GPSと連動したサービスがますます重要になっていくことが予想される。それをどうマーケティングに生かしていくのか、ビジネスの可能性は大きく広がる。

(江口 陽子)