日本銀行の黒田東彦総裁4月1日、参議院の決算委員会でマスクを外して質疑に答える日本銀行の黒田東彦総裁 写真:つのだよしお/アフロ

 国際通貨基金(IMF)が最近発表した「世界経済見通し」によると、先進国経済は今年半ばまではリーマンショックを上回る勢いで急失速するが、年後半から上向き始め、2021年末になれば19年末の経済水準の99%を回復するという。

 ただし、これはベースラインシナリオとしての予想だ。新型コロナウイルスのアウトブレイク(感染拡大)の展開次第で予測は大きく変化する。次のリスクシナリオが提示されていた。(1)「アウトブレイクが20年に長期化」、(2)「アウトブレイクが21年に再発」、(3)「アウトブレイクが20年に長期化し、21年に再発」だ。

 それらの21年末の経済水準は、ベースラインに比べ、(1)はマイナス1.7%、(2)はマイナス5.1%、(3)はマイナス7.6%となる。なおIMFは成長が上振れする楽観シナリオを今回提示していない。つまりベースラインといいながらも、本音ではリスクシナリオを心配していることが分かる。

 米調査会社ギャラップはこの4月上旬に米国で次のアンケート調査を行った。「政府が社会的距離の規制を停止し、仕事や学校が再開される時期が来たら、あなたはどのくらいの迅速さで日常の活動を元に戻しますか」。これに対して「すぐに元に戻す」と答えた人は20%だった(都市部に住む人は15%)。3月下旬の同調査と比べて人々はより慎重化している。

 米ウォール街に勤める友人に聞いてみたところ、米国のニューヨークや隣のニュージャージーに住む人々の大半は、ドナルド・トランプ大統領が主張している経済の早期再開は極めて危険だと感じているそうだ。有効なワクチンや治療薬が登場しない限り、混んだレストランで食事したり、大観衆のヤンキースタジアムやマジソン・スクエア・ガーデンに行ったりするのは恐ろしいという。