新型コロナウィルスの影響で外出時間が減った今年、なんとなく日々重たいような気分を感じているという人も多いのではないだろうか。そんな中、世界最高の創造集団IDEOのフェローによるきわめて画期的な本が上陸した。『Joyful 感性を磨く本』(イングリッド・フェテル・リー著、櫻井祐子訳)だ。
著者によると、人の内面や感情は目に映る物質の色や光、形によって大きく左右されるという。つまり、人生の幸不幸はふだん目にするモノによって大きく変えることができるのだ。
本国アメリカでは、アリアナ・ハフィントン(ハフポスト創設者)「全く新しいアイデアを、完全に斬新な方法で取り上げた」、スーザン・ケイン(全米200万部ベストセラー『QUIET』著書)「この本には『何もかも』を変えてしまう力がある」と評した他、アダム・グラント(『GIVE & TAKE』著者)、デイヴィッド・ケリー(IDEO創設者)など、発売早々メディアで絶賛が続き、世界20か国以上で刊行が決まるベストセラーとなっている。その驚きの内容とはどのようなものか。本書より、特別に一部を紹介したい。

「日当たりの悪い部屋」は人生にこんなに悪いPhoto: Adobe Stock

光は「気分・集中力・生産性」に影響する

 私たちのエネルギーレベルを決定する24時間周期の概日リズム(体内時計)は、日光によって調整される。また日光は皮膚におけるビタミンD生成を促し、免疫システムを調節し、感情のバランスを保つ神経伝達物質セロトニンのレベルに影響を与える。

 日照時間の短い高緯度地方では、多くの人が季節性情動障害として知られる(SADという、ぴったりの略称で呼ばれる)冬の鬱症状に悩まされる。光と気分は同じ軌跡をたどることが多い。光を減らせば喜びも減るのだ。

 世界中どこでも、人は暗がりを避け、光あふれる場所を探し、住まいに自然光を取り入れ、太陽あふれる南国に旅行する。建築家のクリストファー・アレグザンダーと共同研究者は、人々の空間の使い方に関する画期的な論説集『パタン・ランゲージ』(鹿島出版会)の中で、建物に関する最も重要な事実として、次の点を指摘している。

「砂漠を除くすべての気候帯で、日当たりのよいオープンスペースは利用され、そうでないオープンスペースは利用されない」

 アレグザンダーが行った、カリフォルニア州バークレーの住宅街での実験で、通りの北側の住人は裏庭(北向き)を使わなかった。代わりに歩道に面した小さな前庭にすわり、裏庭はガラクタ置き場と化していた。日陰の庭や広場は人の寄りつかない場所になり、南に面した「建物や庭は、活動と笑いにあふれるしあわせな空間になる」と彼は書いている。

 同じことが屋内についてもいえる。

 太陽は北半球では空の南側を通るから、居間が南向きの家は陽気で和気あいあいとするのに対し、居間が北向きの家は暗く陰鬱なことが多く、住人は居間を出て、反対側の明るい自室に引っ込んでしまう(南半球の場合は太陽が空の北側を通るから、南北が逆になる)。

 日当たりのいい部屋で感じられる喜びは、健康の具体的な尺度とも一致する。日光を浴びると血圧が下がり、気分が向上し、集中力が高まり、生産性が上がることが、研究により一貫して示されている。

 窓際に席がある従業員はより精力的で、仕事でもそれ以外でも身体活動量がより高いことがわかっている。

 小学校での実験では、最も日当たりのよい教室の生徒は、1年間で読み書きの進度が26%も速くなり、算数は20%速かった。病院では日当たりのよい病室の患者は、日当たりのよくない病室の患者に比べ、退院が早く、鎮痛剤の必要量も少なかった。