日光で「生気」を取り戻す
ニューヨークの名門芸術大学プラット・インスティテュートでインダストリアル・デザインの修士号を取得。世界的イノベーションファームIDEOのニューヨークオフィスのデザインディレクターを務め、現在はフェロー。8年を投じた研究により「喜び」を生む法則を明らかにした『Joyful 感性を磨く本』は世界20ヵ国で刊行が決まるベストセラーとなった。
Photo by Olivia Rae James
日光がいちばんだが、それが無理な場合は、広域スペクトルの人工光でも同様の効果を得ることができる。
1日に2500ルクスの光を1時間ほど照射することによって、季節性の鬱を軽減できることは、以前から知られている。20件の研究のメタ分析により、光療法は抗鬱剤と同等の効果が期待できるという驚くべき結論が導かれている。
また長期療養施設のアルツハイマー病患者を対象とする研究では、明るい光を浴びた患者は、鬱と認知機能低下が改善した。だが光は医薬品ほど利益が上がる治療法ではないために、光療法に関する研究はあまり進んでいないのだ。
それでも、光の健康効果は数世紀も前から理解されている。
「青白くしおれた植物と人間は、日光に当てなさい」とイギリスの著名な看護師フローレンス・ナイティンゲールは書いている。「もし手遅れでなければ、どちらも健康と生気を取り戻すだろう」
ナイティンゲールは1860年に、どの患者も自然と光に顔を向けて寝ていると報告している。傷ついた側を下にして寝ると痛いと訴えながら、そうしている患者もいる。
「なぜ痛いのにわざわざそっちを向くのですか?」と彼女は尋ねる。「患者はわからないと答えるが、私たちはわかっている。それが窓のある方だからだ」
(本稿は、イングリッド・フェテル・リー著『Joyful 感性を磨く本』からの抜粋です)