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 一流の人材とそうでない人材には「考え方」に根本的な違いがある。その本質的な差とは、いったいどのようなところにあるのだろうか──。
 グーグル元会長兼CEOのエリック・シュミットらが書いた世界的ベストセラー『1兆ドルコーチ──シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え』は、スティーブ・ジョブズや、グーグルCEO、アップルCEO、ユーチューブCEOら、シリコンバレーの大物たちがこぞって「師」と仰ぎ、コーチを依頼した伝説的人物、ビル・キャンベルのリーダーシップの秘訣を紹介した1冊だ。とくにシュミットのいたグーグル、ジョブズのいたアップルにおいて、ビルは絶大な存在感を発揮し、経営層に詳細なレクチャーを施していた。
 そんなビル・キャンベルは、「一流」の条件をどう捉えていたのか、また、どのようなリーダーに厳しく反省をうながしたのだろうか。本書から特別に一部を紹介したい。

「威圧」で制するリーダーは三流

 2008年8月、ゴシップサイト「ゴーカー」に、「テック業界の最も恐るべき暴君ベスト10」と題した記事が載った。

「わめく者たちに捧ぐ」というという書き出しで記事は始まっていた。名優リチャード・ドレイファスのナレーションによる1997年のアップルのCM、「シンク・ディファレント」のパロディだ。

「イスを投げる者たち。殺すぞと脅す者たち。威圧的な目つきの者たち。彼らは人とちがった見方をする――そしてそれに従うまであなたをにらみ倒す。ルールを好まず、とくに『従業員に敬意をもって接する』という人事規則を嫌う」

 記事は続いてテック業界の最も悪名高い者たちの名前を並べ上げた。

 スティーブ・ジョブズ、スティーブ・バルマー(マイクロソフトCEO。当時)、ビル・ゲイツ、マーク・ベニオフ(セールスフォース・ドットコム会長兼CEO)、そして最後から二人目に、グーグルからただ一人のエントリー、われらがジョナサン・ローゼンバーグ(グーグル上級副社長)の名があった。

 ジョナサンは歓喜した。業界最大のスターが並ぶトップ10リストに入ったぞ! 言うなればタフな頑固者の殿堂入りだ! 数日後、コーチであるビル・キャンベルとの1 on 1の部屋に入ると、記事のコピーがテーブルに置いてあった。ジョナサンはニヤリとした。

 だがビルは笑わなかった。「ジョナサン、これは自慢するようなことじゃないぞ!」。ジョナサンは返事らしきものをつぶやいたが、ビルはののしりの言葉の弾丸でそれをさえぎり、急所にとどめを刺してきた。

「これを君の母さんに送ろうか? 母さんはどう思うだろうな」

 二人は「ジョナサンの母はリストに息子が載っているのを喜ばない」ということで合意した。

シリコンバレーの伝説的コーチ、ビル・キャンベル(1940-2016)
Courtesy: The Campbell Family

 ビルがジョナサンに「人がすべて」の信条を語ったのは、このときが初めてだ。

 これはビルがインテュイット社でCEOを務めていたときに持つようになった信条だ。ビルはジョナサン、エリック・シュミットをはじめ、コーチしていた全員に対し、何度も、次の文句をまさに一字一句繰り返し語った。

人がすべて

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 どんな会社の成功を支えるのも、人だ。マネジャーのいちばん大事な仕事は、部下が仕事で実力を発揮し、成長し、発展できるように手を貸すことだ。われわれには成功を望み、大きなことを成し遂げる力を持ち、やる気に満ちて仕事に来る、とびきり優秀な人材がいる。優秀な人材は、持てるエネルギーを解放し、増幅できる環境でこそ成功する。マネジャーは「支援」「敬意」「信頼」を通じて、その環境を生み出すべきだ。

「支援」とは、彼らが成功するために必要なツールや情報、トレーニング、コーチングを提供することだ。彼らのスキルを開発するために努力し続けることだ。すぐれたマネジャーは彼らが実力を発揮し、成長できるよう手助けをする。

「敬意」とは、一人ひとりのキャリア目標を理解し、彼らの選択を尊重することだ。会社のニーズに沿う方法で、彼らがキャリア目標を達成できるよう手助けをする。

「信頼」とは、彼らに自由に仕事に取り組ませ、決定を下させることだ。彼らが成功を望んでいることを理解し、必ず成功できると信じることだ。
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