「中田敦彦のYouTube大学」や「両学長 リベラルアーツ大学」などで取り上げられ、今話題になっている『FIRE 最強の早期リタイア術』。早期リタイアして自由に暮らす生き方「FIRE」(Financial Independence, Retire Early)の第一人者が、貧しい生い立ちながらも資産をつくり、若干31歳で経済的自立を手にした「具体的メソッド」を詰め込んだ1冊だ。今回は『FIRE 最強の早期リタイア術』によせられた、ベストセラー『父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え』の著者、ジェイエル・コリンズの序文を特別に公開する。

【FIRE】話題の“早期リタイア術”を著名人が続々取り上げる理由<br />Photo: Adobe Stock

ジェイエル・コリンズによる序文

 読者の一部は本書を嫌いになるだろう。

 経済的自立(FI)に到達できるのは一部の特権階級だけであり、自分のような不遇な人間には絶対に手の届かないものだと吐き捨てる誇り高きネイセイヤー(何事も否定する人)連合の一員であれば、間違いなく嫌いになるはずだ。

 そんな風にあきらめる前に、あなたの人生が次の項目に1つでも当てはまるのかどうか見てほしい。

 ・あなたは全体主義の体制下で育ったか?
 ・あなたの家族は1日44セントで生活したことがあるか?
 ・初めてのコカ・コーラがそれまでで最も感動した経験だったか?
 ・飲み終わったコーラの空き缶があなたにとって最も大切な持ち物になったか?

 それでは、私自身の不運な境遇についてお話ししよう。

 私は5歳のとき、道端で拾った汚い炭酸飲料の容器を集めて2セントを稼ぎ、近所の家をまわってハエたたきを5セントで売っていた。

 続いて、中国の農村で育ったクリスティー(著者)の話だ。

 彼女は5歳のとき、おもちゃの材料になる宝物を探して医療廃棄物の山を漁っていた。果たして、その中から5セントの価値のあるものを見つけられただろうか?

 私の家族は、日に日に悪くなっていく父の健康状態とビジネスについて頭を悩ませていた。

 彼女の家族は中国共産党員が玄関のドアをぶち破り、父親を労働改造所に連れて行くのではないかと戦々恐々としていた。

 大変な子ども時代ではあったが、私の幼少期の物語は彼女と比べるとその足下にも及ばない。おそらくあなたの物語も同じではないだろうか。

 そしてここが大切なポイントだ。そんな境遇に生まれながらも、彼女は決してあきらめなかった。どんなにつらい困難に直面しても、彼女は決してあきらめなかった。

 途中でどんな障害に阻まれようとも、彼女は決してあきらめなかった。それらを自分の武器に、モチベーションに、道しるべに変えていったのだ。

 医療廃棄物のガラクタからおもちゃをつくり、コーラの空き缶を宝物のように扱っていた少女がいまでは、世界中を旅行し、高級レストランで食事をし、を書き、称賛されているブログを立ち上げた。

 物語の中で、彼女は中国での貧困層からカナダの学校でいじめられる異端者、大学生、エンジニア、投資家、ミリオネア、そして自由を謳歌する女性へとはい上がっていく。

 本書を読んで度肝を抜かれる人もいるだろう。クリスティーは次のようなことを教えてくれる。

 お金は世界で最も大切なものだ。お金は犠牲を払う価値のあるものだ。お金は血を流してでも得る価値のあるものだ。

 ちょっと待ってほしい!

 あまりに異端すぎないか? お金は、あらゆる諸悪の根源ではないのか?

 現代社会ではそうではない。お金は我々にとって唯一最も強力な武器なのだ。うまく利用すれば、あらゆることがより良く、より簡単で、より面白くなる。何もないところからすばらしい選択肢を生み出してくれる魔法の杖なのだ。

 愛はどうした?
 家族はどうした?
 教育はどうした?
 文化はどうした?
 ……はどうした?

世界で最も大切なのはそうしたことではないのか?

それらがどうした?

 あなたは自分の家族や愛する人を大切にしたいと思っているのではないか? それならお金があった方がいいはずだ。

 もっと家族や愛する人と長い時間を過ごしたい? それならお金があった方がいいはずだ。

 教育、読書、文化のための時間や余暇がほしい? それならお金があった方がいいはずだ。

 すべて最良のものを手に入れて、最大限楽しむ時間がほしい? それならお金があるだけではなく、あなたのために働いてくれるお金があった方がいいはずだ。

 普段は度肝を抜かれない人でも、クリスティーの言葉には必ず圧倒される。

 本書は、読者の一部をミリオネアにしてくれるだろう。ただあくまで一部だけだ。全員ではない。

 言いわけをやめて、実践する心構えが必要だ。多くの人にはその心構えがない。自分の資産運用を(そして自分の生活すべてを)自分の手で行う心構えが必要だ。多くの人にはその心構えがない。

 もし、あなたがそうした心構えができている数少ない人のひとりであれば、クリスティーがあなたの道しるべになってくれるだろう。

 まるで小説のように面白い彼女の物語を通して、彼女はいかに富を築くか、いかにその富を守るのか、そしていかにその富をあなたの生活費を賄いつつ自己増殖してくれる強力な機械に育てるのかを教えてくれる。

 狡猾な運用手数料を最小限に抑える方法など、実践的な内容も学べるだろう。

 彼女は何に投資し、なぜ投資したのかを詳細に説明し、あなたがどうすれば同じことができるのかも教えてくれる。

 あなたはそのすべてに同意するわけではないだろう。ただ、私が最も不快に思うのは自分の考え方に沿わないからといって本の内容を批判する人々だ。

 偉大な本とは、あなたの偏った見方を裏づけるものではなく、あなたの視野を広げてくれるものであるはずだ。本の中のアイデアというのは、その背後のロジックやいかにそのアイデアがわかりやすく提示されているのかを基準に評価されるべきだ。

 自分自身の考え方と照らし合わせて評価すべきものではない。

 本書は、まさにロジックと明瞭さのお手本だ。

 本書は、道のりが恐ろしいことを知っている。

 クリスティーもそれをわかっている。彼女は自分が経験した不服、恐怖、疑い、そして失敗を読者と共有している。その上で、それらを回避するための実践的でわかりやすいアイデアや戦略を1つひとつ教えてくれる。

 彼女は私たちの手を取って、こんな風に説明してくれる。

 お金はそれほど壮大で複雑なものではなく、理解するのに天才レベルのIQなど必要ありません。シンプルな教訓ばかりです。それぞれを理解するのは難しくありませんが、合わさることで大きな力を発揮します」。

 彼女が紹介するのは、経済的な自由への到達をより容易かつリスクの少ないものにする強力なコンセプト、例えば、地理的アービトラージ、サイドFIRE、パーシャルFIといったものだ。

 経済的自立に到達するには6桁(10万ドル以上)の年収が必要で、子どもがいたら実践できず、仕事を楽しんでいるならそんなことは不必要で挑戦する価値もない。

 彼女はこういった通説を1つひとつ検証し、見事に論破してくれる。間違いなく言えるのは、支えとなるお金があった方があらゆることはうまくいく。

 仕事だってそうだ。彼女はミリオネアに成り上がるまでの金額についての詳細を本書に載せている。

 疑いの目を持っている人はぜひ参照してほしい。

 本書はあなたに豊かになってほしいという思いで書かれている。お金、時間、そして人生において。

 もちろん、あなたはおそらく泣き言を言わないし、不満を垂れるネイセイヤーでもないはずだ。あなたは、本書を手に取った。

 できない言いわけを考えている暇などない。あなたはすぐに始めたいはずだ。どうやるかを知りたいはずだ。

 本書を手にすることで、あなたは正しいスタート地点にいる。クリスティーがあなたを手取り足取り懇切丁寧に導いてくれるはずだ。それらは年齢、住む場所、経歴、受けた教育に関係なく実践できるものばかりだ。

 最後に、私が本書の中で一番気に入っている文章を紹介する。

「もしお金を理解すれば、人生は信じられないほど気楽なものになります。大多数の人のようにお金を理解していなければ、人生は信じられないほどつらいものになります」。

 ぜひ、あなたには、気楽な人生を選んでほしい。