「この株は売り? それとも買い?」「儲かる株はどっち?」まるで投資シミュレーションのようにクイズを解きながら「株で勝つ技術」を身につける画期的な1冊『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』が発売された。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの楽天証券・窪田真之氏。チャートの見方について話を聞くと、「大口投資家による売買の痕跡」をチャートで見つけられれば、大きなチャンスになると教えてくれた。

株トレPhoto: Maxim Hopman/Unsplash

ファンドマネジャー時代には、小型株を200銘柄持つこともあった

──前回のインタビューでは、小型成長株はトレンドが出やすく、チャート読みが利きやすいと伺いました。窪田さんもファンドマネジャー時代は小型成長株を多く保有していたのですか?

窪田真之さん(以下、窪田):私は400億円くらいの中小型株ファンドを運用していました。普通のファンドマネジャーが買わないような時価総額の小さい株にも投資していました。投資するのは、高成長を期待する株と激安株です。常に100銘柄以上持っていました。200銘柄持っていた時もあります。

 もちろん、その中には本当に大化けする成長株があれば、見かけ倒しの株も混じります。ファンダメンタルズも見ますが、チャートで値動きなどを見ながら、いい株を残して、ダメな株を切るという作業をしていました。

──200銘柄は多いですね。

窪田:そうですね。年金など公的資金を担当する人からは、よく「分散投資ですか」と聞かれました。そうではなく、買いたい株の候補が多いため、必然的に保有する銘柄の数も多くなるのです。

 たくさんの銘柄を持ったのは、失敗銘柄をすぐ売れるようにするためでもありました。1%ずつ100銘柄持っていれば、そのうち1つが暴落しても、ポートフォリオ全体に与える影響は最大1%です。毎日ストップ安で売り続けて、最終的に半値で売り切ったとしても、0.5%くらいの影響しかありません。

大口投資家による「売買の痕跡」はチャートに残る

──買う場合も売る場合も、一気に売買すると株価が大きく動いてしまう可能性がありますね。

窪田:はい。大きく買うと株価が上がってしまいますし、大きく売ると下がってしまいます。私はそのような影響を考えて、独自のルールとして、1日の出来高の3割までしか売買しないことにしていました。例えば、1日の出来高が10万株の銘柄であれば、1日3万株までしか売買することができません。

──1日3万株を上限とすると、必要な株数を集めるまで日数が必要ですね。

窪田:そうです。例えば、100万株を買い付けなければならない銘柄に対して、1日の上限が3万株であれば、およそ30営業日以上かけて買っていくことになるのです。

 こういう手口は、実はチャートに現れます。例えば、株価1000円までで買おうとしている場合、最初は1000円を下回っている時だけ買います。1000円を下回ると買いが入るパターンが何日も続きます。1000円以下で買えなくなったら、次に1030円までで買う、みたいにターゲットをあげていきます。

 こういう動きをチャートから読み取ることで、「この株には大口投資家の買いが継続的に入っている」とわかってくるのです。(関連記事:「株価が上昇しやすい株、上がりにくい株」決定的な違い

──売るときも同様に日数がかかりますね。

窪田:そうです。ダメだと思った株はストップ安になっても売りますが、売り切るまでには何日もかかります。

 個人投資家の中には、ストップ安になった株を見て「安い」「買おう」と考える人がいますが、その株を私たちのようなファンドマネジャーが売ろうとしていた場合、まだまだ株価は下がります。まだ手元に売りたい株が何十万株と残っていますので、次の日も、その次の日も売りますし、売り切るまで株価は下がるのです。

 そういう背景を考えると、ストップ高比例配分で買うのはいいですが、ストップ安で買っては絶対ダメです。

──チャートの値動きから大口投資家の気配を感じ取ることが大事ですね。

窪田:はい。1000円前後で売買されていた株が、ある日突然、売買高が増えたり、その結果として株価が1100円になったりします。そういう株を見かけたら、僕は1110円に上げてでも買っていました。

 個人投資家の中には、「上がりそうだから1070円で指値注文を入れてみよう」と考える人もいますが、きっと買えません。売買高や株価の微妙な変化を捉えた別の大口投資家が、1120円で買おう、1130円で買おうと考えるため、価格が上がっていくことがほとんどなのです。

窪田真之(くぼた・まさゆき)
楽天証券経済研究所 所長兼チーフ・ストラテジスト
大和住銀投信投資顧問などを経て、2014年より楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト。2015年より所長兼務。日本株ファンドマネジャー歴25年。年間100社を超える調査取材をこなし、公的年金・投資信託・NY上場ファンドなど20代で1000億円以上、40代で2000億円超の日本株運用を担当。ベンチマークである東証株価指数(TOPIX)を大幅に上回る運用実績をあげてきた。楽天証券では2014年から現在まで、同社投資メディア「トウシル」にて月曜日から木曜日まで「3分でわかる!今日の投資戦略」を連載。月間200万ページビューを超える人気コラムとなっている。主な著書に『株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』(ダイヤモンド社)がある。