もし今、50歳前後のサラリーマンで、「このまま65歳まで会社にいて給料をもらい、あとは年金生活に入ろう」と考えているなら、それはあまりにもお気楽かもしれない。

 人材サービスを手掛ける会社の社長から聞いた話だが、某大手企業(いわゆる重厚長大産業の企業)の人事担当役員が「通常の人事の業務として、社員比率が高い50歳前後(48~54歳程度)から退職勧奨を強化せざるを得ない。早期退職制度は40歳半ばまで引き下げられるのではないか」と話していたという。

 50歳前後といえば、まだ働き盛りと思っていたのに、会社は「もう辞めてもらいたい」と思っているのだからコワイ話だ。経営環境が厳しさを増すなか、もはや企業側も高度経済成長期のように社員全員を最後まで“看取る”余裕はない。「給料が下がってもいいから、このままいさせて」と願っても、会社にしがみつかせてもらえなくなる日も近いのだ。

 人件費の負担だけでなく、50歳前後の入社は景気がよかった80年代で、採用された人数が多いことも問題。彼らに早く出て行ってもらい、若手に昇進のチャンスを与えなければ、優秀な若い人材ほど辞めていってしまうという事情もある。

 先の役員が言うには「50歳前後の年代になると、会社にぶら下がり、“給料以下の仕事しかできない人”は、正直言って全体の5割を超える。2割くらいが将来の役員として会社を担っていってほしい人材」なのだそう。50歳前後のサラリーマンで「最近は仕事があまりできないなぁ」と自覚している人は、いつ肩をたたかれてもおかしくないというわけだ。

会社にとっての課題は、
いらない人材にどう「ご退場」いただくか

 そもそもこの役員が人材サービス会社を訪れたのは、「50歳前後の社員を対象としたショック療法的な研修プログラムができないか」という相談のためだった。“ショック療法的”とは穏やかではないが、そこには3つの思惑がある。

 1つは、給料に見合った仕事ができなければ会社にいられないことを自覚してもらうこと。「そんなにがんばらなくても、定年まで給料はもらえる」と努力を怠っている人に警鐘を鳴らし、仕事ができる人材に変わってほしいというわけだ。