お昼時、カフェテリアでは美人が際立つ。トレイを持って席まで運ぶ姿から差が出始める。その姿は同じように思われがちだが、かなり個人差がある。

 美人は颯爽と席まで進む。すばやく空いている席を発見し、背筋を伸ばしてスムーズに運ぶ。自分が食べたいものを選び、それを楽しむ。食事を前に少し笑顔。

 食べることを想定して、トレイには選んだものが上手に配置してあり、運ぶ時もバランスを崩したり、こぼしたりしない。また、他人の動きもきちんと見ているので、ぶつかることが少ない。人の流れも見る余裕があるため、空いている席を見つけるのも上手だ。

 自分が選んだものに満足している。体調、バランス、スケジュールなどを考え、自分が食べたいもの、食べるべきものがイメージできていて、上手に取っていく。上手に配置されたことで、上手に食べる。そして食べ終わった後のトレイがきれいだ。大きな差はこの食後のトレイに出る。

 ほとんどのカフェテリアでは取る時に前進あるのみだ。はじめに全体を眺めることだ。そして取り方を考え、食べ方を想像する。

 ごく当たり前のことだが、それができない人がいる。目の前のものを見る。そしてなぜか他人のトレイの上ばかり見る。全体を見ずに他人と自分のトレイばかり。他人のトレイの影響で、前進あるのみの場で後退も試みる。会計に行っても、会計が終わって席に行くまでにもまた他人のトレイだ。おかげで席が見つからない。自分のトレイの上を整える時間がないので、バランスをくずしやすい。水やスープがこぼれる。ようやく発見した席にまっしぐらとなり、そんな人同士がぶつかる。そんな経験が多いので、運ぶことに自信がなくなり背中が丸まっていく。

 ようやく席に着いても、こぼしたものが取ったナプキンを台無しにしていて、また取りに行く。慌てているので、また他人とぶつかりそうになる。ぶつかりそうになったついでに、またその人のトレイも凝視する。急いで席に戻り、整理されていないトレイの上のものを食べていく。食べながらも他人のトレイ。結果として食後のトレイの上が汚れていく。

 そういう人が何人か頭に浮かぶと思う。その人は美人だろうか。ほとんど残念だ。他人のトレイばかり見ると「美人のもと」がなくなっていくようだ。カフェテリアでは自分の意思を尊重しよう。