大前研一氏のパソコンには、自家製の人脈データベースが組み込まれている。軽く1万人を超えるデータのなかには、GE前会長のジャック・ウェルチ、インド最強財閥の総帥ラタン・タタといったそうそうたる名前が並ぶ。

大前研一 ビジネス・ブレークスルー社長
大前研一 ビジネス・ブレークスルー社長

 マッキンゼーの経営コンサルタントに転じた当初、500社に営業に行きました。名刺だけはたまったけれど、契約は一件も取れなかった。2年間の努力はまったく徒労に終わりました。あの頃はマッキンゼーなんて知られてなかったから、「キンゼー報告」(米国人の性行動に関する有名レポート)と間違えられたりしてね(笑)。

 マッキンゼー支社長時代の会食回数は年間600回。ワーキングデーの朝昼晩すべてを費やした計算になります。でも、会食が人脈開拓にきわめて役立ったかといえば、そうではない。飛び込み営業や会食だけでは、知り合いの数は増えても、知的な人脈の幅は広がらないものです。

 ひと昔前と違って、影響力のある人たちは明らかに忙しくなっている。仮に食事を共にするとしても、2軒目、3軒目にハシゴしたがる人は減っているし、向島で芸者を呼んでドンチャン騒ぎをやったなんていう話も何年も聞いていない。

 カラオケ、マージャン、ゴルフも、人脈構築の方法としては時代遅れなんですよ。信頼関係を深めたい相手に対して、たいした用事もないのに、やたらに会食、ゴルフに誘うのは、失礼ですらあると僕は思う。

人脈開拓というと、直接会う回数がモノを言うと考えるビジネスマンは多いだろう。しかし、大前はこれを真っ向から否定する。多忙な人であるほど時間は惜しいからだ。やたらに会食、ゴルフに誘うのは逆効果で、費やす時間に比例する成果はとうてい得られないという。

コミュニケーションで問われるのは
人間力そのものだ。

 最近、僕はもっぱら電話か電子メールでコミュニケーションをとっています。外国の要人なら、まず電子メールですね。