漆間巌・内閣官房副長官のオフレコ懇談が話題になっている。
首相官邸で開かれている週1回の定例懇談会の席上、「政府高官」として、西松建設の政治資金規正法違反事件に絡んで、「自民党議員への波及はない」と語ったのが騒動の発端だ。
それを共同通信が報じて、「国策捜査」を裏付けるものとして野党が批判し、続いて、記者クラブ各社が「政府高官」の氏名の公表を迫ったというものだ。
「政府高官」の発言内容そのものは、まったくもって論外であり、もはや是非で論じるレベルのものでもない。また、漆間氏の政治的な志向については、拙著『官邸崩壊』と『宰相不在』で指摘しているので、ここでは改めて言及しない。
今回論じるのは、漆間氏の発言そのものではなく、彼を取り巻く記者クラブメディアのオフレコ懇談への対応の酷さだ。
海外とは「オフレコ」の
意味が大きく異なる
結論から言えば、今回の漆間氏の発言は、日本特有の記者クラブの中ではいざ知らず、少なくとも、全世界のジャーナリズムのルールでは、「オフレコ」の要件を満たしていない。
まず、「オフレコ」の概念が日本と海外では大きく異なるのでそれを説明する。
海外での「オフレコ」とは、文字通り「オフ・ザ・レコード(off the record)」であり、記録することは出来ず、原則的に記事にすることもできない。日本の記者クラブの「オフレコ」は、「政府高官」や「政府筋」などの匿名で報じることができる点を考えると、おそらく「バックグランド・ブリーフィング(background briefing)」を指しているようだ。
ここで、用語の違いをとやかく言うつもりはない。問題は、漆間氏のオフレコ懇談の環境が、「オフレコ」の条件をまったく満たしていないことにある。
海外で「オフレコ」(以下BBもオフレコに統一)が認められるのは、情報源を明示することによって生命の安全が脅かされる可能性のある場合、あるいは氏名公表によって著しい不利益を蒙る可能性が高い場合に限定される。