
三菱自動車が、台湾の電子機器大手ホンハイにEVの生産委託を検討している。ホンダと日産自動車の統合が破談し、三菱自も生き残りの道を模索する中、強かったASEAN市場では中国勢の勢いに負けてシェアを落としている。ホンハイは三菱自の製造技術の吸収を重視しているはずだ。今後、ホンハイが三菱自の買収を目指す可能性もあるだろう。わが国の製造技術が海外流出するリスクも否定できないが、どうすればいいのか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
三菱自動車とホンハイの協業は
日本の産業で重要な試金石に
自動車産業は100年に一度の大変革期に差し掛かっている。電気自動車(EV)への転換や、自動車のソフトウエア化(SDV)への動きは、まさに日進月歩の感がある。それに伴い、異業種を含めた構造変化が起きている。
これまで世界のトップに立ってきた、わが国の自動車業界もそうした荒波に巻き込まれている。日産自動車とホンダの統合構想が頓挫する一方で、三菱自動車が台湾の電子機器受託製造業、鴻海精密工業(ホンハイ)にEVの生産を委託するという。実現すれば、日本で初めてEV生産を他社に委託するケースになる。
EV部門では中国勢の台頭が顕著で、比亜迪(BYD)が世界のEV市場を席巻する勢いだ。米国では、GMとフォードが韓国企業との関係を重視し、電動化やトランプ政権の関税リスクへの対応を急いでいる。欧州の大手メーカーは、運営体制を立て直して中国勢に対抗しようとしているが、今のところ状況はかなり厳しい。
日本の自動車業界は、製造技術を磨いて垂直統合のビジネスモデルを確立してきた。しかし足元では、電動化やSDVへの潮流で、水平分業の波が押し寄せている。いかに変化に対応し、生き残るか――。三菱自動車とホンハイの協業は、重要な試金石になるだろう。