「『なぜ、そう思うの?』は、絶対にNGです」
「なぜなぜ分析」をはじめに「なぜ?」という問いは“論理的に考える”ための「良い質問」だと考えられている。しかし実は「なぜ?」「どうして?」は、致命的な「解釈のズレ」を生み、噛み合わない会話=「空中戦」を作り出してしまう元凶、「最悪の質問」なのだ。
「事実と解釈の違い。これに気づけていない人は、まだ確実に“曇りガラス”の中にいます」――。話題の新刊『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』では、世界・国内の各地で実践・観察を積み重ねてきた著者による「賢い質問の方法」=事実質問術を紹介している。本書に掲載された衝撃の新事実の中から、今回は「ありがちなNG質問」について紹介する。(構成/ダイヤモンド社・榛村光哲)

「なぜ?」は最悪の質問
質問には、よい質問とよくない質問があります。
よくない質問の代表が「なぜ?」「どうして?」と聞く質問です。
これがよくないのは、過去記事でも紹介している通り、まず第一に、相手の「思い込み」を引き出してしまい、それがコミュニケーションのねじれにつながるからです。
しかし、安易な思い込みを導くという意味で、危険なのは、「なぜ」だけではありません。この他にも、「よくない質問」はいくつか存在します。そのうちの1つが、次の質問です。
先に結論を言ってしまうと、この質問も、「なぜ質問」や「どう質問」と同様に、相手の「思い込み」を引き出すよくない質問です。今回は、この質問のどこがよくないのか、考えていきましょう。
「問題は何?」と聞くと、相手に「忖度」させてしまう
先に結論をお伝えしてしまうと、ひとたび「問題は何ですか?」と聞いてしまうと、相手はありもしない問題を無理に作って答えてくれようと「忖度」します。
事例をひとつ紹介します。ある保健師さんの経験を基に構成したものです。
O ありがとうございます、なんとかやってます。でも最近、よく薬を飲み忘れて、認知症かも……。
M そうですか。それは心配ですね。来週、公民館で認知症予防教室があるのですが、Oさんもいかがですか?
O そうですか。ありがとうございます。考えておきます。
Mさんの「最近お体の調子はいかがですか?」という最初の問いかけは、自然な語りかけに思えます。一見、良い会話のように映りますよね。
しかし、Oさんはこの認知症予防教室には来てくれなかったそうです。それどころか、後でわかったことですが、薬を飲み忘れたのもたった一度きりで、記憶もピンピンしていたそうです。なぜ、このようなことが起きたのでしょうか。
相手への「忖度」が余計な問題を生む
実は、ここで発生しているのが「忖度」です。
「最近お体の調子はいかがですか?」という質問についてよく考えてみましょう。Oさんの気持ちになって考えてみてください。「保健師のMさんが、自分の家まで、わざわざ来てくれた」というシチュエーションでこのように聞かれたら、あなたはどう反応しますか。きっと「保健師さんがわざわざ来てくれて、体調を心配してくれているのだから、何か言わないと相手に悪い」と考えてしまうのではないでしょうか。
つまりこの質問は、実質的に、「問題がどこかに“あるんじゃないですか?”」と聞いているのと変わらないのです。
聞く側は、「相手の問題を知って役に立ちたい」という思いでこう聞いたのですが、聞かれた側はその気遣いに応えないのもなんだか悪いと思い、それらしいことを答えようとしたのです。つまりMさんは、結果として気を遣わされてしまったのです。コミュニケーションのねじれがここでも生じています。
こういった場合は、「いつ」「どこ」「だれ」などの、5W1H(ただしWhyとHowは除く)を使って、具体的に質問する「事実質問術」を使います。本書で紹介する「事実質問術」は、「なぜ」質問だけでなく、「どう質問」にも解決策を提示するのです。
(本記事は『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』の一部を抜粋・調整・加筆した原稿です)