
2025年3月28日、MS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下の三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険の合併が公表された。2010年に持ち株会社を設立して経営統合した両社だが、それから15年もの時間が経過した。そこで、連載『ダイヤモンド保険ラボ』の本稿では、合併の決断に至った背景をレポートする。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
三井住友海上とあいおいニッセイ同和が
27年4月をめどに合併
MS&ADインシュアランスグループホールディングス(HD)は2025年3月28日、傘下の三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険の2社が27年4月をめどに合併すると発表した。
合併により、一般企業の売上高に相当する正味収入保険料は単純合算で2兆9922億円(24年3月期)となり、下図の通り、業界トップの東京海上日動火災保険を抜いて国内首位となる。もっとも、図下段の通り、利益面では東京海上には遠く及ばないため、首位になったとの実感はないというのが実情だろう。
とはいえ、両社の合併は積年の課題であり、大きな一歩を踏み出すことになったのは間違いない。両社が経営統合して、持ち株会社MS&AD HDが発足したのが10年4月のこと。これまで両社の合併に関する議論は、浮かんでは消えることを繰り返してきており、合併を決断するまでに実に15年もの歳月がかかったからだ。
「ようやく片付いたね。あれだけ癖のある会社だけに、落ち着くにはこれだけの時間を掛ける必要があったということだろう」と、ある金融庁幹部は話す。
財閥系の三井住友海上と、野武士集団と呼ばれる大東京火災海上保険が主流派を占めるあいおいとでは、企業風土が違いすぎた。しかも、あいおいの合併の歴史を振り返れば、トヨタ自動車と親密な千代田火災海上保険に加え、日本生命保険を親会社とするニッセイ同和損害保険が存在する。
トヨタと日本生命という日本を代表する企業の存在が、両社の合併を容易にさせない要因でもあった。それを打破したのは、やはりMS&AD HDと三井住友海上の両方のトップを務める舩曵真一郎社長の“剛腕”だろう。