ジョン・アデア ジョン・アデアは、3つの円から成る「行動中心型リーダーシップ」のモデルで最もよく知られており、組織におけるリーダーシップ論ではイギリスの第一人者として広く認知されている。

 アメリカのウォレン・ベニス同様、アデアはリーダーシップは後天的なものであると固く信じており、彼の研究は「リーダーは偉人である」とする説を覆すのに貢献した。彼はリーダーシップとマネジメントを明確に区別しており、マネジメントが力学、統制、システムに根差しているのに対し、リーダーシップは仕事、チーム、個人という3つの円が重なり合って相互に影響し合っているとした。

 アデアの思想は実用的であり、働く環境にかかわらずすべてのマネジャーに当てはまるため、現在でも人気がある。彼は、意思決定、イノベーション、個人の効率といった、リーダーシップの他の実務的側面についての思想ではあまり知られていないが、彼の考えの多くは当時の時代を先取りしたもので、現在では広く教えられ利用されている。

人生と業績

 ジョン・アデアの初期の経歴は変化に富んでおり、それが彼のリーダーシップ観の土台となったのは間違いない。彼は近衛歩兵第三連隊に入隊した後、アラブ軍団で軍務についたただ1人の英国人兵となった。アラブ軍団ではベドウィン連隊副官であった。大学入学前に甲板員の資格を取得し、アイスランドのトロール漁船で働いた。また、病院の手術室勤務員としての経歴も持つ。ケンブリッジ大学で学んだ後、サンドハーストの英国陸軍士官学校おいて軍事史の上級講師およびリーダーシップトレーニングアドバイザーになった。その後、ウィンザー城聖ジョージ館の研究責任者になり、2年後には産業協会の副理事長に任命され、行動中心型リーダーシップ論の第一人者となった。

 1978年、アデアはサリー大学において世界初のリーダーシップ学教授となる。現在はエクセター大学のリーダーシップ学客員教授で、世界中の数々の企業、政府、学校、病院、非営利組織など各種組織のコンサルタントを務めている。

 彼の重なり合う3つの円の行動中心型リーダーシップのモデルは、30年以上にわたって企業文化や個人のリーダーシップスタイルに取り込まれ、多くの組織にとって代表的なマネジメントトレーニング手法となっている。

思想のポイント

●行動中心型のリーダーシップ
 このシンプルかつ実用的なモデルは、比喩的に3つの重なり合う円で描かれている。この3つの円はそれぞれ仕事(タスク)、チーム、個人を表している。このモデルが長く親しまれているのは、リーダーが効果を上げるために取るべき基本的な行動を示しているからであろう。

・仕事を遂行する
・チームをつくり維持する
・個人(部下)の能力を開発する

 アデアは、仕事、チーム、個人の3つがリーダーシップを構成する要素であると考えた。人々は自分のリーダーに、タスクを遂行する手助けをしてほしい、チームワークのシナジーを生んでほしい、個人の要求に応えてほしいと期待するからだ。