【今回のまとめ】
1.1カ月ぶりに米国株式市場は週間ベースでプラスを記録
2.市場参加者の慢心も払しょくされた
3.新興国は人気離散が続いている
4.新興国成長鈍化の問題は解決したわけではない
NY市場、ようやく反発
先週はダウ工業株価平均指数が+0.61%、S&P500指数が+0.81%、ナスダック総合指数が+0.54%と、過去1ヶ月ではじめて週間ベースでプラスとなりました。

去年1年間を通じてアメリカ株の調整局面は-3%から-7%の範囲内でした。もし今回もそれが当てはまるのであれば、1月の調整局面は完了したという風に理解できます。因みにS&P500指数は1月15日の高値から先週水曜日の安値までで-6.1%の調整でした。
過熱感はとれた
マーケットが下がった関係で市場参加者の慢心は、かなり払しょくされました。下はブルベア指数ですが、ブル(強気)が先週の53.1%から45.9%へ急減したのが注目されます。

ブルベア指数は典型的な「逆指標」であり、強気が多ければ多いほど「相場には悪い」と解釈します。
アメリカ市場が本当に調整局面を抜け出したかどうかを判断するには、フォロー・スルーの買いが入ることを確認する必要があるでしょう。言い換えればS&P500指数がもう一段高する必要があるのです。S&P500指数の50日移動平均線は1810にありますので、これが目先のターゲットになります。つまり、ここ二日間の上げが「ダマシ」であるかどうかは、今週以降の市場の動きによって決まるのです。
バイオと金鉱株が物色された
年初来のセクター別のパフォーマンスを見ると、バイオテクノロジーと金鉱株が最も良いパフォーマンスでした。これらのセクターは景気が強い時に買われるセクターではないので、市場参加者は米国のGDP成長率に対する予想を若干、引き下げているという風にも解釈できると思います。
新興国株式ファンドの解約は高水準
また先週後半の反発局面では新興国株式の戻りが今一つでした。これは引き続き新興国に関して投資家の懐疑的な見方が続くことを示唆していると思います。実際、年初からの新興国株式ファンドの解約総額は186億ドルに達しており、これは去年一年の解約額153億ドルを軽く上回ってしまったことを意味します。
新興国ファンドを運用しているファンドマネージャーとしては、折角、新興国株式が割安に放置されていても、ファンド解約に備えなければいけないので買い出動しにくいです。
雇用統計
先週金曜日に発表された1月の非農業部門雇用者数は予想の+18万人に対し、結果+11.3万人と悪かったです。

それにもかかわらずニューヨーク市場は上昇しました。これは去年の12月から続いている米国東部と中西部の天候不順で「足下の経済統計は信頼が置けない」と投資家が考えているからです。
毎年2月は過去の非農業部門雇用者数に大幅な改訂が入る月として知られていますが、今回の改訂では過去1年間の数字が合計+13.6万人上方修正されました。このことも投資家が悲観一色にならなかった一因です。

1月の失業率は予想6.7%に対し、結果6.6%でした。

失業率が先月比で何パーセンテージ・ポイント改善したかをグラフにすると、次のようになります。

過去2年間の平均では毎月平均して0.0833ポイント改善しています。これを当てはめると米国の失業率が連邦準備制度理事会(FRB)の数値ベースのターゲットである6.5%を下回るのは3月ということになります。
今週火曜日に新しくFRB議長に着任したジャネット・イエレンが下院で証言します。大方の予想では毎回100億ドル程度の債券買い入れプログラムの縮小が今後も粛々と継続されると見られています。
のど元過ぎれば
以上をまとめると、年初来続いてきた新興国経済減速懸念から来る世界同時株安は、一旦、収まった感じがします。
先進国の株は買い出動して良いと思います。
ただしFRBは債券買い入れプログラムの縮小を引っ込めたわけではありませんし、新興国経済の問題も解決したわけではありません。過去の新興国の通貨危機を振り返ってみると、米国のFRBの引き締めが続く限り、長い時間をかけて何度も新興国の危機がぶり返すパターンが多かったです。
その意味では今回の新興国経済の問題も、ちょうど欧州財政危機の問題が2010年から2012年まで何度も蒸し返されたように、折にふれて再燃すると覚悟した方が良さそうです。
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