世界投資へのパスポート
【第362回】 2015年4月12日公開(2017年11月29日更新)
バックナンバー 著者・コラム紹介
広瀬 隆雄

日経平均株価2万円とアベノミクスを
アメリカの投資家はどう見ている? 
いまゼネラル・エレクトリックが買いの理由とは?

【今回のまとめ】
1.米国投資家にとって日経平均株価2万円に違和感は無い
2.世界的な株高とM&Aの隆盛はFRBの利上げがしやすくなったことを意味する
3.ゼネラル・エレクトリックのGEキャピタル処分は、そういう好環境だからこそ出来た
4.ゼネラル・エレクトリック株は買いだ!

アメリカから見た日本株市場

 日経平均株価が15年ぶりに一時2万円をつけました。

 そこでアメリカの投資家は海の向こうの日本で起きていることをどう見ているのか? という点について、まず論じたいと思います。

 その前にアメリカの投資家が、なぜ日本株にとって関係あるのかを、ちょっとだけ復習しておきます。下は世界の投資信託の資産の所在を登記国ベースで示したものです。

 なお投資信託が組み込んでいる株式の比率は44%程度です。後はマネー・マーケット(16%)、債券(15%)などになります。いずれにせよ、米国の存在が圧倒的であることがお分かり頂けると思います。

 米国の投資信託は主にフィナンシャル・アドバイザーとよばれる資産運用の助言をする専門家たちの意見で売ったり、買ったりされます。彼らは半年に一度の割合でお金を預かっている個人投資家と面談し、その度ごとにポートフォリオのアロケーション(=資産配分)を決めてゆきます。

 現在はドル高局面であり、普通、米国のフィナンシャル・アドバイザーたちはそういう局面で海外の資産の配分を増やすと為替で損をするので海外投資には慎重です。

 幸い、近年は為替ヘッジされた日本株へ投資するファンドなどの新しい投資機会が増えているので、円安を心配せずに日本株により多くの資産を配分することが出来るようになっています。

 ひるがえってアメリカ企業を見た場合、昨今のドル高で決算が悪くなっている企業が続出しています。いまは2015年第1四半期の決算シーズンがはじまろうとしているわけですが、今回の決算シーズンは最近では初めて全体としてマイナス成長になると予想されています。これは円安で企業業績が伸びている日本と好対照をなしています。

日本株は向こう12ヵ月の利益予想に対して15倍程度の株価収益率(PER)で取引されており、これに対してアメリカ株は18倍程度となっています。

 つまりバリュエーション的にも日本株にムリは無いのです。

 日本では量的緩和政策に対しては懐疑的な見方も多いですが、一足先に量的緩和政策に踏み切ったアメリカはすでに不況を脱し、いよいよ利上げを試みる段階に来ています。この「成功体験」があるので、アベノミクスに対する否定的な意見はアメリカの方がずっと少ないように感じます。

世界株高がFRBの金融政策にどう影響する?

 連邦準備制度理事会(FRB)は表向きには「外国の経済や金融市場のことを心配するのはFRBの仕事じゃない」という立場を堅持しています。

 しかしそれではFRBが外国経済や海外のマーケットで起きていることを全然気にしないか? と言えば、それは気にしています。

 実際、先日もベン・バーナンキ前FRB議長が「欧州各国の金利がマイナスになっているような局面でアメリカが利上げするのは良くない」という意味の発言をして注目されたばかりです。つまり海外市場が元気の無いうちは、FRBも安心して利上げ出来ないというわけです。

 しかしここへきて欧州株式市場も、中国・香港市場も、そして日本株も好調です。つまり世界的な株高になってきているわけです。

 それはFRBが利上げのタイミングを模索するにあたって「心の重し」が取れたことを意味します。

 また最近は怒涛の如くM&A(企業買収・合併)が発表されています。2015年第1四半期のグローバルM&A総額は8871億ドルで、去年の第1四半期に比べ+23%でした。これは2007年の1.1兆ドルに次ぐ高水準です。

 ここ数週間の主なディールを振り返っただけでもHJハインツによるクラフト・フーズの買収(454億ドル)、アッヴィーによるファーマサイクリックス買収(210億ドル)、ロイヤルダッチシェルによるBGグループの買収(700億ドル)など大型案件が目白押しです。

 企業の経営者のマインドが委縮しているときは、M&Aは活発ではありません。M&Aが物凄い勢いで戻ってきているということは、経営者が景気の先行きに自信を持っていることのあらわれです。

 しかしM&Aの隆盛はマーケットの過熱、バブルの醸成と紙一重であるという見方も出来ます。つまりそろそろ冷やしにかからないと景気拡大局面が逆に短命で終わってしまうリスクが増加しはじめているわけです。

 FRBがそろそろ重い腰を上げ、利上げに取り組まないといけないのはこのためです。

ゼネラル・エレクトリックの金融ビジネス撤退

 そこで先週の金曜日に飛び込んできたビッグ・ニュースはゼネラル・エレクトリック(ティッカーシンボル:GE)が金融ビジネスから撤退するという発表です。

 ゼネラル・エレクトリックの金融ビジネスはGEキャピタルという名称で投資家に知られてきました。GEキャピタルはゼネラル・エレクトリックの去年の利益の42%を稼ぎ出した、同社最大の部門です。もっと簡単な言い方に直せば、「全米第7位の銀行に相当する金融サービス会社が、売りに出される」ということです。

 これは資産売却の総額にして1650億ドルにも上る、巨大な案件というわけです。

 それだけの資産を一度に買える企業は無いので、GEキャピタルは事業内容ごとにバラバラにされ、部分的に買い手を見つけてゆくことになります。すでに南カリフォルニアを中心としたオフィスビル・ポートフォリオはウェルズファーゴとブラックストーン・グループに265億ドルで売却されると発表されました。

なぜGEキャピタルは今、処分する必要がある?

 ゼネラル・エレクトリックがGEキャピタルを処分する決断をした背景には、リーマンショックで投資家が巨大金融コングロマリットを見る目が変わったことがあります。

 つまり巨大金融機関は、安心感を醸し出すというより、逆に「大きくて、潰せない」などの不都合を生みやすい存在と見做されるようになり、厳しい監視下に置かれるべきだと言う風潮になったのです。

 GEキャピタルの場合、親会社がゼネラル・エレクトリックという事業会社であることから資金調達コスト面では専業の銀行よりどうしても不利にならざるを得ません。金融サービス業が成長産業だと見做され、チヤホヤされる環境では、それでも続けるメリットはあるわけですが、メガバンク全体がうさんくさいビジネスだとう目で見られている昨今、ゼネラル・エレクトリック全体の企業評価の足を引っ張る存在に成り下がったGEキャピタルを保有し続けるメリットは大幅に薄れたのです。

 幸い、今は世界的に超低金利であり、不動産ビジネスやリース事業は好景気です。それらの事業を売却するなら、今が好機というわけです。

 さらにGEキャピタルは世界中で金融サービス業を展開しています。するとその事業の買い手は、日本のメガバンクなどを含めた、世界中の企業が参加しなければいけないのです。

 その点、昨今の株高で日本や欧州の金融機関のトップのマインドは、積極的になっています。この面からもゼネラル・エレクトリックがGEキャピタルから「足抜き」するなら、今がベストなのです。

ゼネラル・エレクトリック株は買いだ!

 さて、ゼネラル・エレクトリックはGEキャピタルを売却した後、その売却益の大半を株主に還元することを公約しています。資産の処分は向こう2年間のうちに完了し、900億ドルを自社株買戻し、配当、その他のカタチで株主に還元するとしています。

 このうち自社株買戻しに割り振られる資金は500億ドル程度であり、現在の株価で計算するとゼネラル・エレクトリックの発行済み株式数が17%程度減ることになります。

 またゼネラル・エレクトリックは現在の配当を維持すると約束しています。

 さて、GEキャピタルを売却した後のゼネラル・エレクトリックはどのような姿になるのでしょうか?

 下は2014年のゼネラル・エレクトリックの部門別売上高から金融サービスと、既に売却された白物家電のビジネスを除いた事業構成を示したものです。

 実際にはジェット・エンジンのファイナンス、風力発電のファイナンス、医療機器のファイナンスなど、ゼネラル・エレクトリックが事業会社としてビジネスを進めてゆく上でどうしても必要となる与信業務はGEキャピタルの売却時にも温存されますので、金融サービスがゼロになるわけではありません。従って上のパイチャートは、あくまでも大まかな目安ということになります。

 ゼネラル・エレクトリック株ですが、同社のバリュエーションの足を引っ張ってきた金融サービスのビジネスが無くなるので、投資家は同社の現在の19倍という株価収益率(PER)に対して抵抗感が薄れると思います。

 しかも配当利回りは3%を超えており、配当水準は本業の業績に関係なくとうぶん維持されると会社側が約束しているわけですから、安心して投資できます。

 さらにGEキャピタルの事業を小刻みに処分したお金で、どんどん自社株を買い戻してゆくわけですから下値には自社株買戻しのビッドがびっしり詰まっていることになります。

 つまりこの先、大きなキャピタルゲインは望めないかも知れないけれど、配当を取ってゆくという戦略なら、ゼネラル・エレクトリック株は好適な投資対象になるということです。
 

【2017年12月1日更新!】

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