「テレビショッピング・カタログ通販の利用経験者はそれぞれ3割、7割。これに対してネットショッピング利用経験者は全体の9割に上る」。経済産業省は4月21日に発表した「消費者の購買に関するニーズの動向調査」で、消費者の流通チャネルが大きく変わっていることを改めて指摘した。特に男女とも40代の多忙な層、子育て層、要介護者のいる層でネットショッピングの利用率が高いという結果もわかった。

 日本通信販売協会(JADMA)の発表によれば、2008年度の通信販売業界全体の売上高は4兆1400億円。スーパーや百貨店が売り上げの減少に苦しむ中、伸び率は6.7%と非常に好調だ。

「かさばるから通販で」
意外な1位の正体とは

「ネット通販に関する調査」(クロス・マーケティング調べ)より

 実際のところ、利用者はネット通販のどんなところに利便性を感じているのか。クロス・マーケティング(東京都中央区)が4月28日に発表したネット通販に関する調査結果を見てみよう。(対象は全国に住む20~69歳までの男女2000人。インターネット調査による)

 利用者がネット通販を利用する理由として最も多かったのは、「実店舗よりも安く売っている商品」が購入できること(61.4%)。特に「家電」「パソコン・周辺機器」「旅行予約」などで、ポイントが高い。「本」や「CD」でもこの理由で利用するという人は多く、中古商品やネットオークションを利用しているとみられる。

 2位は「時間を気にせず買い物できる」こと(54.0%)。こちらは「美容・コスメ・香水」「レディース洋服」「旅行予約」などでポイントが高い。

 3位は「価格が比較しやすい」(42.8%)。目立ってポイントが高いのは「家電」だった。有名な価格比較サイト「価格.com」の影響も大きいだろう。

 この他、特徴的なのは「美容・コスメ・香水」の購入者は「通販でしか購入できない商品」があることが理由という人が、他に比べて多いこと。女性の間で「通販コスメ」が広く普及していることがうかがえる。

 また、「重たい/かさばる」という理由で利用する人は、「家電」や「本」、「パソコン・周辺機器」などを抑えて「レディース洋服」がトップ。家電は実店舗で購入しても配送してもらえるという事情もあるだろうが、意外な結果と感じる人も多いのでは。

ネットで「衝動買い」できる金額は?

 ネット通販が利用者にとって様々な利便性があることを感じさせる回答結果だが、一方ではそのデメリットも見える。

 購入経験のある商品を聞いたところ、最も多かったのは「本」。以下、「食品」、「CD/DVD」、「パソコン・周辺機器」が続き、実際に手に取らずとも商品内容がわかりやすいものや、比較的価格の低い商品が多いことがわかる。さらに、同調査の結果では、ネット通販で「衝動買いできる金額」の平均は洋服が1万1101円、家具が2万3625円で、実店舗(それぞれ1万5308円、3万6492円)より低かった。

 頻繁にネットショッピングをするというある30代の男性は「ネットで購入する衣服類は靴下や下着くらいだが、試着して返品できるシステムのサイトがあれば、シャツやセーターなども購入を考えたい」と話す。洋服や家具などの場合、実際に見ないで購入することを躊躇する人はまだまだ多い。「ネットショッピングしない商品」のランキングも気になるところだ。

 また「個人情報の入力作業が面倒なのでネット通販はほとんど利用しない」(40代・男性)という層も一定数はいるようだ。

 利用者が増える一方、仕掛ける側からのこんな意見もある。ほぼ毎日タイムセールが行われるという手法で急成長を続ける招待制ファミリーセールサイトを運営する「ギルド・グループ」のCEOスーザン・リン氏は米誌「ファスト・カンパニー」の取材に対し、「オンラインショッピングサイトの多くは、オンラインでこそ実現できるエンターテイメント性や競争にまだ目を向けていない」と語る(「COURRiER Japon」5・6合併号より)。

 利用者としては買い物が便利になるのは望ましいこと。ただ、購買意欲を刺激されすぎるのも困るのだが……。

(プレスラボ 小川たまか)