気圧の変化で誘発されやすいのが片頭痛だ。
脈打つような「ズキズキ」とした痛みが数時間から数日間続くのが特徴で、頭の片方のみが痛むと思われがちだが、慢性化すると両側性の症状も目立ってくる。
15歳以上を対象とした日本全国の調査では、全体の有病率は8.4%、最も有病率が高い30~40代女性では、およそ2割が片頭痛持ちと推測された。男女比は1対4と、圧倒的に女性に多い。
別の調査では、片頭痛持ちの8割以上が医師の診察を受けていない一方で、7割以上が「生活に支障がある」と考えていることも判明している。重症の片頭痛がもたらす苦痛や損失は、終末期のがんにも匹敵するとされており、我慢を強いることは禁物だ。
頭痛が起きてから「頓服」として処方される薬のうち、Aランクで推奨される薬は、「トリプタン系薬」――日本では5種類あり、飲み薬、点鼻薬、注射剤がそろっている――、2022年に承認された「ジタン系薬」、そしておなじみの消炎鎮痛薬がある。
デンマーク・コペンハーゲン大学の研究者らは、(1)アセトアミノフェン、(2)ジタン系薬、(3)日本未承認のゲパント系薬、(4)非ステロイド抗炎症薬(イブプロフェンなど)、そして(5)トリプタン系薬の5種類について、服用2時間後時点の痛みと、2~24時間後の効き目の継続度を比較した。
その結果、服用2時間後の痛み消失度は、エレトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタンの順に良好で、2~24時間後の痛み消失持続効果では、エレトリプタンとイブプロフェンの有効性が高かった。
副作用はトリプタン系薬でめまいや疲労感、吐き気などが認められた。研究者は「有効性と安全性の両面から、トリプタン系薬が最も好ましい」としている。
現在、国内ではトリプタン系薬をスイッチOTC(市販薬)にするか否かの議論が続いている。
適切な診断が重要なので初回は医師の診断と処方が必須となりそうだが、消炎鎮痛薬と同じように薬局で入手できれば、片頭痛持ちのつらさも和らぎそうだ。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)